地道な活動で遊休農地解消へ 青森・弘前市農業委員会
弘前市農業委員会(前田優考会長、64、農業委員26人、農地利用最適化推進委員53人)では、地区ごとに農地の将来像について話し合い、担い手に農地の集積・集約化を進める。農業者年金の加入推進では2023年度、新規加入者数全国第1位(全体の部)を達成。農地利用の最適化活動と担い手対策に農業委員会が一丸となって対応している。

弘前市は、県の西部に位置し、三方を山に囲まれた内陸型の気候が特徴。県内最大流域の岩木川が流れるなど、豊かな自然環境に恵まれる。農業は基幹産業で、市町村別農業産出額は10年連続で東北1位。リンゴの生産量は日本一を誇る。
市農業委員会は日頃から農地利用の最適化活動に積極的だ。全耕地面積1万3,900㌶に対し、担い手への集積が9,048㌶(集積率65.1%)だが、31年度末までの目標である80%をめざし、引き続き活動を続ける。
市内を10地区に分けて開かれる集落座談会では、各地区から選出された農業委員と推進委員が中心となり、農協や土地改良区の関係者も加わって農地の将来像について話し合う。地区内の情報が共有され、中間管理事業も活用しながら、後継者がいないなどの理由で10年後の耕作者が未定の農地を重点的に、認定農業者や集落営農組織などの担い手に集積する。
遊休農地解消に向けては、7月から8月にかけて利用状況調査を実施。同調査では、タブレット端末を用いて、農業委員、推進委員、市農業委員会が委嘱している農地活用支援隊が市内14地区に分かれ、担当地区を巡回する。草刈りによって農地としての耕作が可能となるいわゆる「緑区分」の遊休農地については、所有者に再生利用を促し農地として復旧する。基盤整備事業などの大がかりな整備が必要となる「黄区分」のうち、再生利用が困難と判断した農地については、速やかに非農地判断を行い、守るべき農地を明確化する。前田会長は「委員が一体となり、優良農地を守っていきたい」と話す。

同市では、農業者年金の加入推進も精力的に進めている。原動力となっているのが「弘前市農業者年金協議会」で、20年度に体制を再編成した。市内10地区すべてに加入推進部長1人を設置し、管内の3農協の9支店長と各委員79人合わせて88人が加入推進員として戸別訪問を行う。
岩木地区の加入推進部長を務める田村眞裕美農業委員は、「委員が連携して、加入推進対象者の選定や戸別訪問先を増やすなど、地道な活動の積み重ねが大事」と話す。この結果、23年度には31人の新規加入があり、全国で新規加入者数1位を達成した。
農業委員会の蒔苗元事務局長は「農地利用の最適化も、農業者年金をはじめとする担い手対策もどちらも大切」と話し、市農業を発展させていく未来を見据えている。