デジタル技術で最適化推進 広島 福山市農業委員会
福山市農業委員会(谷本耕造会長(73)、農業委員15人、農地利用最適化推進委員30人)では、AI解析を活用した利用状況調査を実施するなど先進技術を導入。戸別訪問など各委員による地道な活動とデジタル技術を組み合わせ、農地利用の最適化活動を進める。

福山市は県の東部にあり、瀬戸内海沿岸のほぼ中央に位置し都市化が進む一方、温暖な気候に恵まれることから水稲を中心に、ブドウやクワイなど多種多様な野菜・果樹を生産している。
同市農業委員会では、7月から利用状況調査を実施している。
地域計画のブラッシュアップのための農地所有者への意向把握は、タブレット端末のワンデスクシステムで行っている。対象は、昨年度、同市農業委員会で行った書面での調査で回答がなかった農家で、推進委員が戸別調査を実施する。
この準備のため、6月には、地区ごとにそれぞれ2回の操作研修会が開かれた。訪問の意義や注意事項、ワンデスクシステムの操作方法について、農業委員会事務局の職員が説明した。
参加した各委員からは「所有農地が地図上にピンポイントで表示されるのでわかりやすい」「操作に慣れるまでは難しいかもしれない」などの声があがった。
谷本会長は「戸別訪問でしか把握しづらいあいまいな情報にこそ、その人の本音が隠されている」と話す。また、「AIやタブレット端末を活用して、農地の詳細な状況や意向、後継者の有無など、地域の抱える課題や要望を効率的に把握していきたい」と地道な現場活動とデジタル技術の活用の充実に意気込む。

同市農業委員会は利用状況調査に、㈱スペースシフト(東京都千代田区)が開発した衛星画像解析技術を活用する。
この技術では、対象地域の衛星画像を分析し、遊休農地の確率を10段階で判定。その結果を基に遊休農地の確率が高いと判定された農地を絞り込み、タブレット端末のeMAFF現地確認アプリで調査を行った。
現地で確認する筆数は半分程度になり、事前に用意する地図やリストを作成する農業委員会事務局の負担も少なくなったという。
事務局の小澤佳弘主事は「目視による判定をした結果、遊休農地の可能性が高いと判定された農地(7以上)は90%近い精度で判定できている」と話す。
昨年度の調査結果から本年度は、明らかに耕作中と判定された農地を調査対象農地から除外するなど運用を改善する。また、現地で確認した誤判定事例を検証することで、分析アルゴリズムの精度が向上し、現地確認すべき筆数はさらに減少していくと期待される。