市と共同で「農地バンク制度」創設 三重・尾鷲市農業委員会
尾鷲市農業委員会(髙村敦夫会長)では2024年2月、市と共同で「尾鷲市農地バンク制度」を創設した。農業者の高齢化や担い手不足、遊休農地の増加を解決しようと取り組みを進める。

三重県南部に位置し、急峻(きゅうしゅん)な山地が海へせまる地形が多い尾鷲市。同市の農地面積は少なく、急斜面に広がっていることから、ほとんどが未整備で階段状に形成されている。地形の影響もあり、農地の流動化が進みにくい状況だ。
同市農業委員会は、バンク制度を活かし、新たな担い手の確保と遊休農地の発生防止・解消に向け、力を注いでいる。
同制度に登録できる農地は、遊休農地か耕作困難となった農地。登録には、農地の所在地や状況、売買や貸借など、希望する契約形態などを記入した登録申請書を農業委員会に提出する。荒廃化が進行するなど再生利用が困難な場合を除き、登録することができる。
農業委員会では、申請のあった農地の現場確認後、氏名など個人情報を除く情報を農地の状態がわかる航空写真と共に市のホームページ(HP)と窓口で公開する。農業委員会の定例総会の時に各委員に情報を共有し、受け手の掘り起こしも進める。
借り受け方法は、希望者がHPなどの情報を基に希望する農地番号などを明記した利用申請書を提出。農業委員会で営農意向などについて面談し、現地案内と法的手続きなど説明する。その後、地権者へ連絡し、契約方法などについて当事者同士で調整するという流れだ。
制度創設時には登録農地は2筆だけだったが、遊休農地対策の意向調査の時にバンクへの登録の案内などをした結果、現在は18筆1万490平方㍍の農地が登録され、うち2筆810平方㍍が次の耕作者に移譲された。


同市農業委員会では、毎月第3水曜日の午前10時から午後3時に「農地相談・新規就農相談会」を開いている。農地に関することや新規就農など幅広く事務局職員が相談に応じており、バンク制度も「農地の受け手を探してほしい」との相談が多いことがきっかけとなり始められた。
同市は24年2月に「オーガニックビレッジ宣言」をしており、市を挙げて有機農業を推進する。「遊休農地の借り受け希望者があるのか」との心配の声もあるが、有機農業をめざす農業者にとっては、遊休農地の方が土壌への化学肥料や農薬の残留が低いことから、「逆に好条件になる」という。
同市農業委員会では、引き続き、バンクへの登録を働きかけるとともに、受け手の掘り起こしに努め、「少しでも遊休農地を解消していきたい」と話している。