地域計画の実現めざし 府委託事業で農地カルテ 大阪府農業会議

 大阪府農業会議(中谷清会長)は、「地域計画実現対策支援事業」に取り組んでいる。府内10市町村で農業委員会と連携しながら農地の貸し付け条件などを聞き取り調査し、「農地カルテ」を作成する。

カルテにはこの他、貸主の細かな意向が示されている

 府が分析した府内35市町村、325地区の地域計画は、農地総面積9,476㌶のうち約20%の1,898㌶が規模縮小の意向を示していた(4月末時点)。また、今後担い手が引き受ける意向のある農地はわずか1%にとどまることも分かった。
 大阪府農業会議では、この分析結果を受けて、「個人・法人の新規参入」や「地域の担い手が規模拡大する」など、農地の受け手の確保が重要と判断した。
 そこで地域計画の実現に向けて農地の貸借を円滑に進めるため、農地カルテづくりに奔走。府事業を受託した地域計画実現対策支援事業で、10市町村の農業委員会と連携し、聞き取り調査から始めた。
 農家には「長期貸借」「ハウスの整備」「永年性果樹の栽培」が可能か「用水の利用状況」「接道状況」などのほか、貸し付け対象は地域の規模拡大意向農家や新規就農、企業参入などの誰を希望するかなどを質問した。
 作成された農地カルテは、府や市町村の相談窓口で新規就農者や農業参入を希望する企業への情報提供に活用される。

 地域計画実現に向けた取り組みが府内で最も進む高槻市農業委員会(森本茂会長)は、9月末時点で貸し付け可能な高度利用農地102.5㌃分の農地カルテを作成した。事業開始以前から農地の貸借促進に注力していたことが主な要因だ。
 地域計画策定時のアンケートで、新規就農・参入希望の個人や法人が所有している農地に興味があるとした場合、声かけの可否の確認を行うなど、市内の農家に具体的な調査をしてきたことが実を結んだ。
 カルテ作成のための聞き取りの際には、地区担当委員が所有者と対策支援事業を実施する農業会議との間に入り、調査の趣旨を説明するなど、円滑に進むよう活躍。また、従来は農地の情報を一筆単位で整理していたが、同事業をきっかけに広い視点から捉え、面的整備の可能性がある区域も含め、把握を進める。
 調査に参加した委員は、地域農業に貢献し、持続的に農業経営を行える農業参入企業をいかに見極めていくかを課題にあげる。一方で企業の要望や条件を整理した「企業カルテ」の整備が進めば、農地貸借のマッチングの促進に期待できるのではないかとも話す。
 同事業を進めていくと農家からは「近隣農家に貸しているが、その人も高齢化しいつ返されるか分からない」「あと数年は耕作できても、それ以上は続けられない」「数年前から耕作できず、どうしようか不安だったので、この取り組みは助かる」などの声があがる。府農業会議は「改めて農家の切実な状況が痛感できた。今後は府や市町村の相談窓口で相談者に合致する農地情報を提供できるよう、より多くの農地カルテの作成を進めたい」と展望を語る。