担い手への農地集積 8割へ 熊本・あさぎり町農業委員会
あさぎり町では、2014年から取り組みが始まった「人・農地プラン」で農地の73%を担い手に集積し、効率的な農地利用が行われている。だが、農業者の急速な高齢化から「本腰はこれから」(同町農業委員会)。10年後を見据えた新たな「地域計画」(目標地図)では8割の集積をめざし、普段の農業委員会活動に力を入れる。

熊本県の南部、球磨盆地の中央に位置する同町は認定農業者数が314と農業経営体の4割近くを占め、40代以下の若手農業者も多い。早くから農地の基盤整備が進み、水稲を中心に葉タバコ、施設園芸、畜産などが盛んな農業地帯だ。
だが農業者全体の高齢化は深刻だ。農業委員会は人・農地プランづくりでこのような「農業資源」を最大限生かそうと検討。町を行政区の49に分け、地域の話し合いを5年間で延べ245回実施し、農業者の意見や要望などを吸い上げた。
この時に作成した「地域の話し合い地図」は1筆ごとに耕作者の年齢分布で色分けした。さらに10年後に想定される年齢分布地図を並べて公民館などに掲示し、危機感を訴えてきた。


地域計画の目標地図作りでは、23年に農地所有者806件を対象に規模拡大・縮小など今後の農業経営意向を調査し、622件の回答を得た。結果は「現状維持」が7割を占めたため、担い手に集積する農地を、①規模縮小意向農家の農地②25年度に80歳以上となる所有者・耕作者の農地──の計185㌶と決めた。
旧町村単位の5校区に分けて農業委員が出し手、受け手双方の意向を個々に確認しながら、関係機関による進め方の勉強会を開催。こうした準備を積み重ねて今年2月、耕作者ごとに色分けした現状の農地地図に、地域内での担い手への集積を反映した目標地図が完成した。この目標地図では担い手への集積割合が8割に達する。
各地区とも担い手の規模拡大意欲は強いため、同町農業委員会では今後について、「地図はその時々の状況に合わせて見直しが必要」(中神啓介事務局長)と集積対象農地の拡大にも含みを持たせる。
杉下和治会長(67)は「5年後、10年後の農地のあり方に不安があったが、目標地図でやるべき方向が明確になった」と話す。
