地域農業の健全な発展へ 石川・野々市市農業委員会

 2025年3月末に全国で約1万9千地域の地域計画が策定。将来の受け手が位置付けられていない農地が約3割にのぼるなど課題も多い。それぞれの実情に応じた地域計画のブラッシュアップ(見直し)が求められるなか、野々市市農業委員会(佛田利弘(ぶったとしひろ)会長・65、農業委員10人)では、地域農業の健全な発展のためさまざまな取り組みを行っている。

佛田会長

野々市市は、白山を望む手取川扇状地の東部に位置する。農地は農業振興地域に約151㌶、市街化区域内に約73㌶あり、水稲生産が盛ん。急速に市街地化が進んでおり、都市近郊農業が特徴だ。
 同市農業委員会では今年3月、地域住民を招き地域計画の説明会を実施した。また、昨今の農業情勢を踏まえ作成し市や県、国に提出する「野々市市における次代の農業についての意見書」の内容も紹介。農業に対して理解を求める活動を積極的に行う。
 佛田会長は、国や県の補助制度について、「大規模で経営を行っている地域や中山間地域を対象にしたものがほとんどで、野々市のように小規模農業を中心とした都市近郊地域に合う政策が少ない」という。「本市が持続的かつ発展的な地域環境を維持創出するためには、国・県・市の政策と協働することが重要」と考え、意見書にもまとめる。
 意見書には、兼業農家などの多様な経営体への支援や認定農業者の基準引き下げ、基盤整備に対する支援なども訴えた。また、農業者と地域住民の交流、食育の重要性、市産農産物の学校給食提供による食料自給率の向上など、街づくりと住民生活に関することなども盛り込まれている。

3月に行われた地域計画などの説明会(佛田会長が説明)

 同市では食育活動にも力を入れる。10月に県内の農産物や菓子、料理など地場の味覚を紹介する食育かるたの『かるた体験会』を開き、市内外の親子30人ほどが参加した。
 このかるたは白山市と野々市市の若手農家の組織「石川農業青年会議」が、コロナ禍でも食に触れる機会を持ってほしいとの思いから、3年前に作成。完成当時、同会議のメンバーで現在は野々市市農業委員の林夢太さん(35)が、食育かるたの活用を委員会内で提案。農業委員会主催でかるた体験会を開催することになった。林さんは「かるたで遊びながら、石川の食文化に理解を深めてほしい。食育を通して消費者や住民から農業への理解を得ることは重要。将来的な農業者の確保に向けて取り組んでいきたい」と話す。
 今後について佛田会長は「本市のような都市近郊地域で地域計画のブラッシュアップを行うためには、農家だけではなく市民の理解を得ることは必要不可欠だ。本年度は各地区の意向調査を踏まえて地域計画の見直しを行う予定」と展望する。来年度については、「進捗を踏まえた意見書を作成し、引き続き地域農業の発展のため要請していきたい」と話す。

10月のかるた体験会