遊休農地を「みんなの田んぼ」に 和歌山・日高町農業委員会
日高町農業委員会(野田秀樹会長)は、遊休農地を再生し、意欲ある担い手を誘致する農業団地化プロジェクト「小浦(おうら)チャレンジファーム(OCF)」を推進している。「みんなの田んぼ」をコンセプトに行政と地域、生産者が連携し、担い手への農地集積・集約化を後押しする。

同町は中紀地方屈指の穀倉地帯。古くから水稲栽培が盛んだが、近年は高齢化や後継者不足による農家の減少が顕著で、遊休農地が増加傾向にある。これまでは近隣農家が農地の受け皿となっていたが、引き受けてきた農家自身も高齢化が深刻で、次世代への事業継承が課題となっていた。
同町小浦地区の基盤整備事業を機に、中核となる担い手を育成するため、小浦土地改良区が中心になって官民連携で検討を進めた。2023年度にOCFが発足し、区画整備した農業団地での実証的運用が始まった。
同町農業委員会は地域と担い手の協議の場を設置し、調整など関係者をつなぐ役割を果たす。農地中間管理機構を通じて担い手への農地集約をスムーズに達成した。
OCFは、24年度に設立した(一社)アッセンブル日高(白井雄太代表理事)が運営。同法人が若手農家の育成を進め、農作業の分業化と農機や設備の共同利用環境を整える。生産基盤の弱い若手農家や新規就農者の参加環境を整備し、集約された優良農地での営農を可能とした。
白井代表理事は「地元住民が協力してくれることで営農面積を増やすことができる」と話す。現在同社のもとで約10人の若手農家が約4㌶で営農。26年度には10㌶に増やす予定で、若手の育成に力を入れている。
地域住民と担い手の窓口役を務める山本喜代一農地利用最適化推進委員は「中山間地の耕作条件では、ゼロから就農するのは非常に困難。OCFは法人が農家を支援する仕組みで、若者に農業という選択肢を示すことができる」と話す。

OCFは、土地所有者が農地を貸し出して終わりではなく、地域農業との関係を継続するのも特徴だ。当初は担い手への農地集積・集約のみが事業目的だったが、農地の出し手から「離農後も地域にかかわりを持ちたい」という要望が寄せられたことから、除草や水管理など一部作業を請け負う仕組みを考案。地域の誰もが作業に参加することで、担い手の農作業を後押しし、地域住民が収入を得る機会も提供する。
人の交流が活発化したことでこれまでにないアイデアが生まれている。今年9月に開いた稲刈り体験には、県外企業を含め約300人の関係者が集まった。収穫されたお米は「小浦れんげ米」として地元スーパーの弁当に採用されるなど、販路に広がりを見せる。
野田会長は「OCFを起点に、イベントや農作業を通じて新たな人の流れとにぎわいが生まれ始めている。取り組みを他の地域にも広げていきたい」と展望を語る。
