新生農委 意向調査起点に農地集積 和歌山市農業委員会

和歌山市農業委員会(谷河績会長)はこのほど、市内で10アール以上を自作している人を対象に、農地の利用状況と今後の利用意向などについて「農地台帳に関する調査」を行った。農業をやめたい人が22%、不作付け農地が16%にのぼるなど厳しい実態が浮き彫りになったが、調査後に農地中間管理事業への貸し付けが急増。農業委員会では、受け手となる担い手の確保と農地集積に力を入れている。
調査は、農業委員会が管理する農地台帳を整備し、農地の有効活用を進めるのが目的。農業委員会が行う農地パトロールを補完する形で行われた。10アール以上の農地を自作している6245世帯を対象に郵送し、回答率は約5割だった。
農地利用の現況では、水稲を中心に野菜や果樹が作付けされるが、草刈りなど管理だけしている農地が7%、1年以上耕作放棄している農地が8%あった。
今後の農業経営意向では「農業をやめたい」が22%。営農計画でも「規模縮小したい」が13%、「農業をやめたい」が21%あり、3割以上が縮小・廃止を考えている。「規模拡大したい」は4%と少なく、「現状のまま続けたい」が62%と過半だが、高齢化でいずれ規模縮小に向かうと考えられ、担い手の育成が緊急の課題となっている。
農業委員会では、担い手の掘り起こしと新規参入の促進、耕作放棄地の解消に力を入れているが、農地中間管理事業の活用に明かりが見えてきた。調査の際に同事業のPRチラシを送ったことから問い合わせが増加。機構への貸し付け実績は2015年(1〜12月)の87アールから2016年(同)は9ヘクタールへと10倍以上に増えた。
同市の認定農業者は約300経営体で、法人や大規模経営も増えている。農業委員会は昨年11月、尾花正啓市長に対して農業施策に関する意見書を提出し、農業経営環境づくりと市・農業委員会が連携した遊休農地解消対策、新規参入など担い手の確保と支援対策の拡充を求めた。
事務局の田村佳紀課長は「いまや無料で貸してくれる農地は宝」とこれまで以上に担い手への集積を進める考えだ。
写真説明=農地パトロールで耕作放棄地を確認する農業委員