農地を活かし 担い手を応援する 守るべき農地明確化 福島・国見町農業委員会

福島県中通りの最北端に位置する国見町。経営耕地面積の約30%がモモ、リンゴなどの樹園地で、近隣の福島市、伊達市、桑折町とともに果樹の一大産地となっている。農業従事者の高齢化などで耕作放棄地の増大が課題となる同町では、農業委員会による非農地判定によって守るべき農地を明確にしたうえ、農業委員によるきめ細やかな対応で農地利用の最適化に努めている。
同町の経営耕地面積は約1200ヘクタールで販売農家数は約650人。畑や樹園地を中心に遊休化が進行し、大きな課題となっていた。すでに山林化しているなど再生困難な農地もあり、農業委員会による全農地の利用状況調査の作業効率も悪くなっていた。
農業委員会では「山林化が激しい農地を農地として管理することには限界がある。非農地として判定をすることはやむを得ない」として、守るべき農地の明確化を進めることにした。
2015年、利用状況調査で再生困難と判断した農地について、農地所有者に事前通知書を送付したうえで、あらためて現地調査を実施し、農業委員会総会で非農地とするかを決定。農地所有者に登記地目の変更を要請する非農地通知書を送付した。
以前、非農地判定は年間数筆程度だったが、2015年度には511筆、約29ヘクタールの農地を非農地と判定することで、利用すべき農地を整理した。
先般、農地パトロールを行った農業委員の松浦万助さんは「非農地化で整理はできたが、これからが重要。地域では日照や境界など、見えにくい感情問題がある。まずこの問題を解決しないと人・農地プランでも本音で話し合うことはできない」と語る。
同町の農地パトロール(利用状況調査)は担当地区農業委員に事務局職員2人が同行して実施する。事務局とともに行動することで、各委員ごとの判断のバラつきを防ぐだけではなく、農業委員は本来の世話役活動に徹することができる。
松浦委員のパトロールでは、調査中に農作業をしている人を見かけたら必ず声をかける。農家住宅の前を通れば訪問し、見慣れない人がいれば世間話から入り、その人の状況を把握するよう努めていた。
こうした地道な努力を重ねて信頼関係を築き、地域の状況を把握したうえで、耕作放棄地の問題や担い手の問題を解決していくことが重要と話している。
写真上=松浦万助委員
写真中=農地パトロールに取り組む松浦委員と事務局職員
写真下=地図を広げ一筆ごとにしっかり確認する