農地を活かし担い手を応援する 農地中間管理事業を活用 福井・小浜市農業委員会

福井県南西部に位置する小浜市。同市は、複数の河川が市内を流れ、地下水も豊富で、水利に恵まれた環境を活かして、水稲中心の農業が盛んだ。しかし、多くの地域が高齢化、担い手不足、遊休農地の問題に頭を抱えている。その中で、同市農業委員会(西田尚夫会長)は、今後の市の農業を見据え、農地中間管理事業を活用した、担い手への農地集積で成果を上げた。
小浜市は、中山間地域が多く、将来、遊休農地が増加し続ける恐れがある。そこで、同委員会の西田会長は、農家の意見をじかに聞きたいと、2015年6月に市内の全農家向けに、「今後の農業に関するアンケート調査」を実施した。
その結果、6割の農家が農地を白紙委任で預けても、適正な管理をしてもらえば問題ないと回答し、白紙委任への抵抗感が弱まりつつあることを把握すると同時に、多くの農家が地域で農地を守っていく必要があると考えていることが調査で明らかになった。
調査の中で特に、以前から農地中間管理事業の実施を求める声があった宮川地区については、地元の農業委員が中心となって、地区の集落ごとに同事業の説明を行った。
同地区は、六つの集落からなる旧村で、2006年に基盤整備事業により、大区画化(30アール〜1ヘクタールの圃場)を実施した。圃場整備後、地区で一つの集落営農組織の設立を目指すも、話し合いがまとまらず断念。四つの営農組織が設立されたが、構成員不足・高齢化などの問題を抱えていた。
米価の下落などで、地域農業の維持・発展に懸念が高まり、同事業を活用しつつ、将来にわたり安定的な体制を整えるため、再度、四つの営農組織を合併・法人化して一つの営農組織の設立と、担い手への農地集約化を目指した。
アンケート調査結果では、担い手への農地集積が進んでいない同地区の1集落の大半が、現状維持の意向が強いと分かり、追加で説明会を行うなど、連日話し合いが行われた。農業委員の戸別訪問も行い続けた結果、同事業の理解を得て集積が進んだ。
最終的には、既存の営農組織を再編し、「(株)若狭の恵」を設立、社員の若返りを実現した。担い手への農地集積率は、150ヘクタール(65%)から163ヘクタール(71%)に拡大。さらに、地域全体で担い手を支える仕組みをつくるため、農地の保全を行う一般社団法人の設立も進んでいる。
大きな実績を上げた同委員会の西田会長は「アンケート調査の実施が話し合いを進めるきっかけになった。今後も、集落と市と農業委員会が前向きに話し合いができるよう努めたい」と力を込めた。
写真説明=座談会で集落の将来を話し合う