新生農委 全地権者に意向調査 茨城・東海村農業委員会

昨年4月に新体制に移行した茨城県の東海村農業委員会(舛井操会長、70)は、農家や行政などが相互に意思疎通しやすい環境を作ることで、地域の課題を掘り起こすほか、毎月こまめに農地パトロールを実施。地域の優良農地を守ることを柱に活動を進める。
同委員会では昨年の秋から今年1月末まで、全農地の地権者(約2300戸)を対象に独自の意向調査を実施。農業委員と農地利用最適化推進委員が戸別訪問なども行って調査票を回収し、回答率は7割強の高水準となった。
調査では5年後の農地の利用方法を問い、「自作を継続」が42%、「後継者に移譲」が9%。「すでに貸している」(26%)、「貸したい」(10%)、「売りたい」(8%)などの意向も把握。重点的に対策をとるべき農地が分かり、今後の方向性の確認につながった。
今回の調査は、農業委員会とJA、行政が連携して開く農業集落座談会で決めた地域の目標を踏まえて実現。昨年7〜8月、「優良農地を守るアイデアをみんなで考えよう」をテーマに14集落で開催し、各地区担当の農業委員と推進委員も顔をそろえた。
今年度からは議論の活発化を狙い、ワークショップ形式を採用した。班ごとに列挙した意見を掘り下げ、取りまとめたアイデアを発表。最後は全員が投票し、集落の目標を三つに絞る。目の前で地域の合意が形成されていく仕組みだ。
同委員会の澤畑佳夫事務局長がこの方法を発案。「若手もベテランも平等に意思表示できる。風通しがよくなり話しやすい雰囲気になった」と話す。
従来の座談会は意見が出しにくい雰囲気もあり、限られた人の発言が地区の総意のように扱われることも多かったという。ワークショップと投票形式は参加者から好評。開催後のアンケートでは9割が支持した。
このほか、今年度から毎月15日に農業委員14人と推進委員6人がそれぞれ農地パトロールを実施している。巡回時は帽子と腕章だけでなく、オリジナルのゼッケンやステッカーを活用してアピール。農地に立ち入る際に住民の理解が得やすくなるなど、作業の円滑化に役立てている。
舛井会長は「新しく画期的なことも、単発で終わったら意味がない。委員や事務局職員が変わっても継続することが重要。長い目で取り組みたい」と語る。
今後の課題は担い手の確保や育成。農業委員会では認定農業者などとの懇談の機会を増やして地域との連携をさらに深めるとともに、担い手育成の支援策を拡充していく方針だ。
写真説明=終始和やかな雰囲気だった座談会