農地を活かし担い手を応援する 下限面積引き下げ 福岡・朝倉市農業委員会

定住促進・遊休農地解消へ

 朝倉市農業委員会は2016年10月1日から、「朝倉市空き家バンクに登録された空き家に付属した農地」を空き家とともに取得する場合における農地法第3条の下限面積要件を1アールに引き下げた。福岡県内では初めての取り組みだ。

 朝倉市は、福岡県のほぼ中央に位置し、北側に山地、南側には筑後川が流れ、肥沃で平たんな農地を形成している。山間丘陵地では果樹、平野部では米麦や万能ねぎの生産が盛んだ。
 同市では、過疎化・人口減少が進み、定住人口の増加が課題となっている。
 一方、田舎暮らしを求め「小規模の農地を取得したい」「小さな面積の農地が付いた住宅を購入したい」という相談や、「空き家と農地をまとめて手放したい」など小さい面積の権利移動に関する相談が増えていた。しかし、一定面積以上の農地を耕作していなければ面積の小さい農地の権利取得はできず、空き家に付いた小さい面積の農地の遊休化も課題となっていた。
 同市農業委員会では、一昨年から、定住促進および遊休農地解消のため、先進地である宮崎県えびの市や島根県雲南市に習い、行政と連携をとりながら、小規模農地の権利取得について検討を開始した。
 昨年4月に、同市で定住促進による地域活性化および集落機能の維持を図るため『朝倉市空き家バンク制度』が制定され、同年10月には、同市農業委員会でも『空き家に付属した農地』の取り扱いを定めた。これにより、(1)農地が付属する空き家が朝倉市空き家バンクに登録されており(2)付属する農地のすべてまたは一部が遊休農地(遊休化が見込まれる農地も含む)であると認められた場合は、その権利取得に当たり、農地法第3条による下限面積を1アールに引き下げることとした。
 なお、転用など不動産投機目的の取得を防ぐため、取得した空き家と農地は5年以上継続して居住、耕作する必要がある。許可申請の際に『5年以上継続して耕作する旨の誓約書』および『農用地利用計画書』の提出が求められる。
 先月、この取り組みで初の農地(約800平方メートル)が『空き家に付属した農地』の指定を受けた。来月には農地法第3条許可の申請が出る見込みだ。
 同市農業委員会の森部賢一会長は「若い人に来てもらって、無理なく小さい面積から始めて徐々に拡大するなど、新規就農の入り口となれば。また、地域の農業者とも交流できるよう、農業委員会が懸け橋になっていきたい」と展望を語った。

写真説明=空き家に付属する農地。一定の要件を満たす場合に下限面積要件を1アールに緩和する