農地を活かし 担い手を応援する 普段の声掛けが大切 栃木・さくら市農業委員会

 栃木県のさくら市農業委員会(田代修一会長)では、加入推進部長を中心に地道な活動で農業者年金加入者を確保している。2013〜2016年度までの新規加入者数は23人。(独)農業者年金基金の「加入者累計13万人に向けた前期3カ年運動・後期2カ年強化運動」では、2013年度と2015年度で単年度目標を達成した。

 2016年度は13人の新規加入者を確保。「夫妻や親子で同時に入ってくれた方が多かったから」と加入推進部長も務める田代会長(65)は話す。
 田代会長自身も1975年に旧農業者年金に加入。2001年の制度の抜本的改革時も脱退せずに新制度にも加入。現在、年金を受給している。
 「専業農家は国民年金だけでは老後生活が不安。農業者年金は本当に必要だと思っている」と話す。田代会長の父親も農業者年金に入っており、父親から経営移譲を受けた時に給料はいらないと言われ、自らの経営に専念することができ、その言葉がありがたかったという。「親が年金をもらって老後も大丈夫だということを後継者に見せてあげることも大事」と話す。後継者夫妻も6年前に農業者年金に加入させた。
 農協の部会や田んぼなどで知り合いと出会ったら何げない会話の中で農業者年金の話をするようにしているという。
 「若いうちは経済的にも苦しいが、60歳になったら加入できなくなる。政策支援を活用すれば若いうちは少ない保険料で済む。支払った保険料が全額社会保険料控除の対象になるといった節税効果もある」。そのほか、農業青色申告会や農業委員会の総会前には農業者年金の話をしている。
 「農業委員は加入対象者へ働きかけて、加入のきっかけを作ることが大切」と話す。
 農業委員会事務局では例年11月に加入対象者リストを農業委員に渡して、担当地区内での声掛けをしてもらっている。またその際には事務局が作成した「農業者年金制度について」と題するA4判1枚のレジュメを持参してもらい簡単に制度の説明をするようにしている。加入対象者が興味をもってくれたら、事務局が訪問するか、窓口まで来てもらって詳しく説明をする手順をとっている。
 鈴木秀幸事務局長は「制度が複雑なのは課題だが、積立方式、確定拠出型で財政的に安定した制度ですので、農家は加入した方がいいと思う」と話す。
 最後に田代会長は「農業者の老後の安定、地域の安定、後継者の育成のためにより多くの農業者に年金制度を知ってもらうことが農業委員会の役割だと思う。そのためには農業委員自らが制度を理解して農家に制度を伝えることが大事だと思う。また、経営者が加入しているのに配偶者が加入していないという状況も改善したい」と話した。

写真=田代会長(右)と鈴木事務局長