新生農委 農地中間管理機構と連携 秋田・藤里町農業委員会

今年7月に新体制へ移行予定の秋田県藤里町農業委員会(小森鉄雄会長)は、農地中間管理機構と連携し、町外の2法人への農地集積を促進した。その後も町民との関係性に配慮したフォローを行うなど、円滑な参入のための橋渡し役を担っている。
今回貸し付けにつなげたのは、農地中間管理事業などを活用して農地を集積していた農家が昨年2月に亡くなり、耕作者不在となっていた約27ヘクタールだ。農業委員会は遊休化を防ぐために迅速な手続きの進行を念頭に置き、翌月に地権者約30人を対象にアンケートを実施して「担い手がいるなら耕作を続けてほしい」との意向を多数把握した。
しかし、町内の農家の高齢化や山間部の条件不利地であることが壁となり、借り手探しは難航。そこで機構に問い合わせ、大潟村の二つの農業法人が借り受けを希望していることを確認し、さっそく農業委員会による面談を行った。
課題となったのは、地域の合意形成だ。同町では町外の担い手が大規模に参入するのは初めて。農業委員会は住民の不安を払拭するため、昨年4月、両法人や地権者、機構などの関係者を対象に現地での合同説明会を開催した。
農業委員会事務局の田代文久係長は「農地中間管理事業の盲点は借り手の顔が見えづらいこと。借り手と貸し手が直接顔を合わせることで、スムーズな理解につながった」と振り返る。
手続きは順調に進み、昨年5月末までに完了。約27ヘクタールのうち24ヘクタールは農地中間管理事業、残りは農業経営基盤強化促進法に基づいて賃借を行い、水稲や大豆などの耕作が始まった。
マッチング後の支援も手厚い。草刈りや水路の管理など地域の共同作業への参加を両法人に呼びかけ、小森会長をはじめとする農業委員が住民との間に入ってコミュニケーションを促進。他にも地元の水利組合への顔合わせを取り持つなど、地域になじめるようにフォローを重ねた。
借り手側も、世界遺産として名高い白神山地の麓にある同町での耕作は、水質や付加価値向上などの面でメリットがあるという。地元雇用を積極的に進めたいとの声も上がっている。
現在、町内の農家は3ヘクタールほどの経営規模がほとんど。法人化やグループ化などで規模を拡大している例もまだ少ない。田代係長は「町内農家にとっても、新しい視点から作業方法の改善や販売・流通の考え方などを学ぶためのいいきっかけになると思う。今後は2法人への視察なども視野に入れつつ、適宜サポートしていきたい」と語る。
写真説明=迅速な手続きで遊休化を防ぎ、無事に収穫までつなげた