農地を活かし担い手を応援する イノシシ被害防ぐ 滋賀・彦根市農業委員会

滋賀県の彦根市農業委員会農政部会(田中金二部会長)は、市と共同でイノシシによる農作物被害を防ぐため、今年2月から荒神山の林道で獣害グレーチングの設置による実証実験に取り組んでいる。
一般的なグレーチングは、側溝などで多く使われる格子状の金属製のフタであるが、彦根市の獣害対策では格子状でなく、六角形タイプを使っており、県内初の取り組み。また、付近にはセンサー付きカメラを設置してイノシシの行動も把握するという。
イノシシは、神経質で警戒心が強く、学習能力も高いといわれているが、このグレーチングは、イノシシが渡りにくいという特長をもっている(図参照)。
県内では、格子の間隔が広い獣害グレーチングを導入している地域もある。しかし、設置する林道は、荒神山の山頂にある神社の参道としても利用され、また、ウォーキングやロードバイクなどで人が多く通行する。そのため、人が安全に通行でき、イノシシよけにもなる一石二鳥の役目を果たす六角形のグレーチングの導入にたどり着いた。
彦根市の中央部に位置する同山は、平野部にある独立した山であり、周囲には圃場整備された水田が広がっている。この山にイノシシが生息し始めたのは、10年ほど前。そのころから、農地への被害が深刻となった。
そのため、市では山の周囲に柵を設置。この山は、他の山と連なっていないため、全体を柵で囲えば被害は防げるが、林道は柵が設置できず、被害が防げなかった。
参道の近くで耕作している同農業委員会の田口源太郎会長も被害にあった担い手の一人。「対策を打たなければ、優良農地が耕作放棄地になり、担い手の集積に支障が出かねない」と危機感を感じていたという。
そのため、同部会では、先進的に獣害対策に取り組んでいる県内の先進地を視察。その後、委員会の中に獣害対策を検討しようという機運が高まり、市や県と連携して検討してきた。
農業委員会も、市長への建議の中でこのグレーチングの設置を強く要望した結果、2016年度に予算化され、設置が実現した。
「今後も獣害対策を農業委員会の重点課題として、地域の農家が安心して耕作できるようしっかりと取り組んでいきたい」と田中部会長は意欲を見せる。
写真説明=完成したグレーチングの設置状況を確認する田中部会長