新生農委 状況・意向調査対象は8211戸 栃木・栃木市農業委員会

農地利用最適化推進委員が78人と全国でも屈指の体制となった栃木市農業委員会(大橋重会長)が、市内の全農家を対象に「農業経営状況・意向調査」を始めた。調査対象は8211戸と膨大。しかも、推進委員がすべて戸別訪問して、直接に意向を確認するという徹底ぶりだ。
調査では、現在の営農状況や農作業従事者の構成、営農意向、後継者の見通しなどを確認する。まだ把握できていない潜在的な農地の貸借希望を掘り起こし、マッチングにつなげる考えだ。推進委員は1人平均で100戸を回り、意向を聞き取る。まさに足でかせぐ情報収集を展開している。
大橋会長(77)は「推進委員と農家が顔を合わせて、じかにやり取りするのが大事。農地の相談を誰にすればよいか知ってもらうだけでなく、今後の委員会活動にも理解を得やすくなる」とねらいを話す。
調査は9月まで。委員会では意向が確認できた地域から農地の集積・集約を中心に担い手支援を始める。その際に、地域の利用調整を担うのは、もちろん推進委員だ。「農地は地域で守る」を原則にして、地域に入り込み、農地の有効利用につなげていく。
推進委員の委員長を務める若林英一さん(67)はJAの元役員。「意向確認をしてみて、改めて担い手が不足していると感じた。農地に対する価値観も変わり、守るという意識が薄くなっている。農地の集約、園芸では技術の継承を急がなければ」と話す。
同市農業委員会は昨年7月に新体制へ移行した。地域密着の委員会活動を行うには、市町村合併前の農業委員数に近づける必要があるとして、農業委員25人に加え、推進委員78人を委嘱した。推進委員には農家や元農業委員、JAのOBなど、地域と農業を知るメンバーが集まった。
新体制のスタートとなったのが昨年7〜8月に行った農地パトロール(利用状況調査)。人員が増えたため、推進委員を中心にして例年以上に念入りに調査した。
その結果、再生利用が難しいとみられる農地は、数回の現地調査を行った上で、121筆(9.1ヘクタール)を非農地判断した。
全国トップクラスとして知られている家族経営協定の推進など、これまで取り組んだ担い手支援もよりきめ細かく行っていく。
大橋会長は「栃木市の農業を盛り上げていくためには、遊休農地の解消と担い手の確保が不可欠。この全戸調査を一つのきっかけに、農業委員会が一丸となって、担い手支援に取り組みたい」と決意する。
写真説明=農業委員と推進委員の意見交換も盛んだ