農委活動の道しるべ(54) 日本の農地制度(9) 分岐点に立つ農地法制 早稲田大学教授 楜澤 能生

 日本の農地制度は今、大きな分岐点に立っている。
 それは経営と労働が一体の農業者や農地所有適格法人が農地の権利主体として、生活の営みの中で生産し、地域農業のあり方を展望しつつ、それに応じた農地管理を集団的に行うとともに、地域の自然的・社会的資源を維持することを通じ、持続的な農業生産と同時に地域社会を形成維持する主体となること。これを支える農地制度を復活させて堅持するか、それとも、全国各地に本社を持つ農外資本が全国の農地を商品一般として自由に売買し、農業生産の効率性を競いあう「公正な」市場競争原理を農村に貫徹させ、全国一律の農地市場を形成するために、これを阻害する農地制度を撤廃するか、否かの大きな分岐点だ。