農地を活かし 担い手を応援する 担い手の将来考え加入促進 佐賀・唐津市農業委員会
佐賀県の唐津市農業委員会(宮文也会長)は地域の農業振興を図るため、農地の利用調整や地域農業者の農業経営などの相談に親身に応じている。こうした日頃の農業委員会活動で農業者から信頼されている農業委員が中心となり、戸別訪問を繰り返し行い、農業者年金の必要性や有利性をPRした結果、2016年度は経営主や後継者・夫婦など26人(全国7位)の新規加入に結びついた。
唐津市は人口に占める農業従事者の割合が県内でも高い地域だ。農業者年金の制度をできるだけ多くの人に知ってもらい、老後のために加入してもらうことは、市にとっても市民生活の安定につながるなどメリットが大きいと考えて取り組んできた。ただ、新制度の発足時に旧制度からの移行を選択しなかったり、離農者の増加や後継者不足などで加入者の確保が難しくなってきている。
宮会長は「今の時代だからこそ、積立年金方式の特徴をいかに打ち出せるかが、加入推進の重要なポイントになってくる」と熱く語る。
まず、年度当初に農業委員会事務局が加入推進候補者の名簿(20〜59歳)を作成。この時点では、国民年金第1号加入を最低限の条件として、経営主のほかにも農業に関与していると思われる女性や後継者まで範囲を広げている。また、身近に加入者がいれば理解を得やすいことと、もし政策支援区分1の加入者の家族であれば認定農業者などの条件を既にクリアしており、区分3での加入推進も行いやすいことから、家族に被保険者や受給者がいるかどうかを項目に追加している。
この後、普段から農業者と接する機会の多い農業委員や、経営面のサポートで関わりの深いJAが連携して対象者を絞り込んでいる。このことによって、対象農業者の実情に応じた農業者年金の利点をPRすることができ、以後の戸別訪問によって繰り返し説明することで、加入に結びつきやすくなっている。
推進活動の中心は、この加入対象者を絞り込んだ名簿を基にした戸別訪問。農業委員会副会長で加入推進部長の井上弎彦氏が強いリーダーシップで推進を強化した。全農業委員と事務局が「担い手こそ老後に年金が必要」との思いで加入推進活動方針を策定。地区別の加入推進班(10班)を編制し、地道に戸別訪問を繰り返した。活動結果は、毎月の農業委員会総会で報告することを徹底。全農業委員で地区ごとの推進状況を共有し、次回の推進に役立てた。その他、集落説明会やJA主催の農業祭などの機会にも加入推進に取り組んでいる。
加入を勧める中で、依然として「旧制度に対する不信感」が払拭できていないことや30〜40歳代の加入対象者から子供の養育費が大変で、「将来のことよりも今の生活が厳しく保険料を払う余裕がない」などの声を受けた。しかし、信頼のおける農業委員からの丁寧な説明を数度にわたり受けたことや、経営指導に詳しいJA職員に農業者年金の利点を補強してもらうことで安心して加入してもらうことができた。新規加入者の実績は、2014年度12人、2015年度13人、2016年度26人となっている。
同市農業委員会は、地域農業の未来を支える担い手の将来のために今後ともJAと一体となった推進活動を展開していく。
写真説明=2016年度に26人の新規加入者を確保し、表彰される井上副会長