農地を活かし 担い手を応援する 渋柿復活し 柿渋を特産物に 京都 南山城村農業委員会

柿渋プロジェクトで遊休農地解消

 京都府の南端にある南山城村農業委員会(奥谷善巳会長)は、柿渋用の渋柿の植栽を広げ、村内に約12ヘクタールある遊休農地を解消する取り組み「柿渋プロジェクト」を2013年から展開している。農業委員会の呼びかけで既に19戸の農家が苗木を植栽し、約1ヘクタールの遊休農地の解消につながっている。

 この取り組みの発端は、農業委員会で遊休農地対策について議論していた際、村内の柿渋を扱う業者から「国内産の原料を求め、柿を植えてくれる農家を探している」との情報を農業委員を通じて寄せられたこと。
 柿渋は主に民家や家具の塗料として加工され、柿渋に含まれるタンニンがシックハウスの予防に効果的と価値が見直されているが、近年、柿の確保が難しくなっているという。
 茶産地である同村でも、茶の防霜や防虫に効果があるとされること、また茶園での作業の際の休憩の場として、かつてはいたるところに渋柿が植えられていたが、茶園管理の機械化などでほとんど見られなくなっていた。
 2013年9月には柿渋業者を農業委員会に招き学習会を開催。当時、農業会議が提唱していた「1委員会1事例づくり運動」に位置づけ、最初は実証圃場づくりとして取り組んでいくことを決定した。
 農業委員が農家に植栽を呼びかけたり、村のイベント会場で農家に苗木の注文を受け付けるなどして、PRと必要な苗木の数の把握に努めた。
 2014年度には植え付けのための講習会を開くなどして、村内の3集落に265本の苗木が植えられ、今年から実がなり始める段階だ。
 渋柿は、高齢者でも栽培しやすく、稲作と同等の収益が望めること、さらに熟成するまでに収穫するため鳥獣被害に遭いにくいことなどから、植栽を希望する農家は多く、苗の供給が待たれている状態で、今後も拡大が期待できる。
 「苗づくり、植え付け、育成ととても時間のかかる取り組みだが、道の駅もオープンしたので村の新たな特産となれば」と奥谷会長。同委員会は今月、新体制に移行するが、この取り組みを引き継いでいきたい考えだ。

写真上=提供を受けた柿の苗木を植樹

写真下=3年目になり収穫が待たれる状態に