新生農委 流動化へ農地銀行が活躍 山梨・甲府市農業委員会

山梨県の甲府市農業委員会(西名武洋会長)が農地銀行を使って、農地流動化を進めている。昨年度は農地銀行を通じて253件、38.5ヘクタールを利用権設定した。うち78件、11.2ヘクタールは新規の設定。市の3分の2近くが森林という中山間地域にあって、地域密着で行うマッチングが効果を発揮中だ。
農地銀行は、農業委員会が市から事務委任を受けて実施。農業委員は農地銀行推進員となって、貸し手と借り手の話し合いを調整する。契約書となる農用地利用集積計画書の提出前には、銀行推進員が必ず目を通し、農業委員会がマッチングに責任を持つ。
銀行推進員は各集落に1人を配置し、総勢76人。現職の農業委員に加え、元農業委員やJAの担当者などがメンバーに入る。農地と地域を知り尽くした強力な実行部隊だ。7月31日の農業委員会の体制移行によって、新たに19人の農地利用最適化推進委員がここに加わった。
農業委員会事務局では「農業委員、銀行推進員が間に入り、顔の見える関係の中で利用権設定を進めているのがポイント。貸す人、借りる人の安心感につながる。先祖伝来の農地だからと貸すのを嫌がっていた人でも、農地銀行に預けてくれるようになった」と話す。
農地銀行に登録されているのは、3月末時点で770件、123.4ヘクタール。1件平均は16アールと小さく、何もしないでいれば流動化できないのが実情だ。一方で、農地中間管理機構への貸し出しは、「原則10年以上の白紙委任が大きなネック」(事務局)となり、地元農業者にとって身近な農地銀行の存在感がより一層際立つようになってきた。
新体制に移行したばかりの農業委員会が力を入れるもう一つが、新規就農者など新たな担い手の育成だ。市の農業従事者の70%が65歳以上となり、果樹地帯を維持するためには、若返りが急務。昨年度は農地銀行を通じて21件、4.2ヘクタールの農地を新規就農者や参入法人につないだ。
加えて、昨年度からは新規就農者・参入法人と農業委員・銀行推進員の意見交換会を開催する。会で上がった「農地と住居が遠い」「農地だけでなく作業場も欲しい」「農機具の費用負担が大きい」との声を受け、農業委員会では住居や作業場、使用しなくなった農機具などをセットで提供してほしいと地域に呼びかける。今後は市の他部局とも連携して、課題解決を急ぐ考えだ。
甲府市の農地銀行活動=1982年に開始し、今年が35年目。農地の集積・集約だけでなく、山付きの樹園地など流動化が難しい農地の遊休化を未然に防ぐ役割も担ってきた
写真説明=契約に立ち会う銀行推進員