農地を活かし 担い手を応援する 高齢化・後継者問題に対応 埼玉 坂戸市農業委員会
農地集積に向け情報収集を強化
埼玉県の坂戸市は都心から45キロ圏という有利な立地条件を生かした都市近郊型農業を展開しており、食品産業や観光業と連携し、地域の経済や市民生活に活力をもたらす重要な役割を担っている。そのような中、就農人口の減少や、年齢構成は65歳以上が約7割を占める高齢化などの課題を抱える。課題の解決に向け、農業委員会は、農地の出し手情報の収集を行い、担い手への農地のあっせんに積極的に取り組んでいる。
坂戸市農業委員会(石川猛会長)は2016年9月、1750世帯の農業者へ農地一筆ごとに貸し付け希望を確認する調査を行った。
結果、貸し付け意向は1363筆、面積は約90ヘクタールにも及んだ。貸し付け希望農地は地図上に色分けするとともに、各地区の農業委員らが日常的に得ている農地の管理状態などを盛り込んで、さらに充実させた。
それをもとに今後、地区の農地利用調整の方向性を整理。この情報は、農業振興課と共有することで、市で一つであった『人・農地プラン』をより実効性の高い地区ごとのプランとする検討につなげるなど、今後の利用集積活動を強化するための土台となった。
こうした活動のきっかけとなったのは、2014年に企業が農業参入した際に行った地域の調整活動だった。当時、参入地区の農業委員が市と連携しながら地域の農業者などの理解を得るために、参加人数を問わず説明会を丁寧に開催。事前に意向把握のための調査を行っていたことも功を奏し、「担い手が耕してくれるなら安心」と地域の農業者の協力を得ることができた。この時に、地権者などの意向を把握しておくことは、その後の利用調整に有効であることを農業委員会関係者が改めて実感した。現在、参入企業への集積の支援は市と農業委員会で行っている。
同農業委員会事務局の担当者は今後、数年に一度、調査を実施し、「事務局内に限らず、関係機関で情報共有していければ」と話す。
石川会長(68)は、「高齢化も進み後継者も少ない一方で、新規参入者や定年就農者の数は増え続けている。農業を継続して守るためには、担い手の環境の変化にも対応することが大切」と話す。
写真上=石川会長(右)と町田肇事務局長
写真下=会議や現地で利用される地図