新生農委 アグリランドバンク事業 山形・鶴岡市農業委員会

山形県鶴岡市農業委員会(三浦伸一会長)は昨年度から、大規模農家などが新規就農者の農地の確保を支援する「アグリランドバンク事業(新規就農支援型)」に取り組んでいる。農業委員会に登録した「支援農業者」が自ら経営する農地の一部を貸すもの。同時に、新規就農者の経営の立ち上がり支援や、新規就農者の農閑期には、忙しい支援農業者の仕事を手伝う相互支援も期待している。
同市は全国有数の穀倉地帯である庄内平野の南部に位置し、米を中心に野菜、果樹などが盛んな農業地帯。認定農業者は高齢化で減少しつつあるため、市は新規就農に力を入れている。農外からも毎年5人程度就農しているが、農地確保の難しさを訴える声が多い。
農業委員会では2015年度から、受け手がいない農地を登録して、借り手につなげるアグリランドバンクに取り組んでいるが、耕作条件が厳しかったり面積が狭いものが多い。そこで新たに始めたのが同事業の新規就農支援型だ。従来と発想を変えて、指導的な中核農業者とともに後進を育成しようというもの。大規模農業者との面談や個別に文書で協力を要請したところ、これまで8経営体(うち法人が7)が支援農業者として登録している。
支援農業者は、市内に農地を所有するか耕作権を有している経営体。貸し出し可能な農地として10アール〜2.7ヘクタールを申し出ている。実際に耕作している優良農地で、新規就農者にとってはメリットが大きい。借地の場合、地権者と貸借契約を交わし直す。適切な耕作状況を確認できるまでは、借り手が収穫物を販売できる「特定作業受託」として貸すこともできる。
対象となるのは、親元就農を除く認定新規就農者。希望の支援農業者と面談する際には、市の新規就農アドバイザーが立ち会う。
農地の貸し出し実績はまだないものの、これまで数件の問い合わせがあり、新規就農者の関心は高まっている。農業委員会の三浦市樹事務局長は「事業の趣旨、仕組みが理解されれば活用が進む。支援農業者にとってもイメージアップになる」と話す。
同委員会は市内11の地区ごとに農用地利用調整委員会を設置し、地域の農地情報の収集や農地受託者のあっせん、利用状況調査をしている。11月から新体制に移行し、農業委員は現行の45人が20人になるが、農地利用最適化推進委員は31人配置される。「今後、調整委員会の中心は推進委員が担うことになり、機動力の強化が期待される」と三浦事務局長。
写真説明=毎年開かれる農業委員と認定農業者などとの懇談会では、新規就農者の経営課題も話し合われる