農地を活かし担い手を応援する 集落営農組織の発展に寄与 兵庫・稲美町農業委員会
全国各地で集落営農組織の法人化が進んでいるが、その法人を維持・発展させるためには、経営の安定が最大の課題だ。兵庫県の稲美町では、農業委員や農地利用最適化推進委員が集落営農組織の役員として法人化や後継者育成などにリーダーシップを発揮している。
稲美町農業委員会(高橋秀一会長)は、昨年4月の改正農業委員会法施行時に新体制に移行した。農業委員14人、農地利用最適化推進委員17人と、総数は移行前に比べ10人増加し、農地利用の最適化活動の体制が強化された。昨年度の担い手への利用集積面積は、目標10ヘクタールに対し84ヘクタールになった。
同委員会では、移行後間もない昨年4月、新任委員を対象に農業委員会の任務について研修するとともに、農産部長会(農会長会)で農地利用集積の制度などを説明。営農組合や認定農業者などから寄せられる相談には、必要に応じ農地中間管理機構の農地集約推進員らとともに対応に当たる体制を整えた。
一方、町内では昨年度、五つの集落営農組織が法人化され、その役員らが中心になって農地所有者と協議し、順次、機構を通じた権利設定が進められている。
今年2月に法人化した農事組合法人ファーム草谷の代表理事は、農地利用最適化推進委員の藤本勝彦さん(57)だ。1982年に設立した集落営農組織と近隣5集落との合同法人化を目指したが協議が整わず、15ヘクタールの作業受託で法人化に踏み切った。その後、所有者の同意が得られ、9月にはこのうちの2.3ヘクタールを機構を通じ借り入れており、今後も農地所有者との協議を続け、順次、利用権設定を進める予定という。
藤本代表理事は「これまでは、いいものを作れば必ず売れていたが、これからはお客さまから求められるものを作る。つまり売れるものを作る」をコンセプトに組合員をリードしている。また、後継者育成も重要であることから“後継者育成プラン”を作成し、農作業への出役や役員会への参画など、若手の経営参画を計画的に促している。
(一社)十七丁営農組合は約10年前から法人化の検討を重ね、昨年4月に法人化。農業委員の平山鉄外喜(てつとき)さん(68)は、現役員らとともに、法人化に向けた住民説明会や意見交換会などを主導し、法人の理事に就任した。現在、機構を通じて、集落内の農地の大半に当たる30ヘクタールを借り受けている。
「今は、大麦と水稲を中心とした経営ですが、将来的には、野菜栽培などにも取り組みたい。また、役員後継者の育成が課題」と平山さんは話す。
写真上=ファーム草谷の役員(左が藤本代表理事)
写真下=十七丁営農組合の平山理事(左)