新生農委 農地中間管理事業で成果 徳島・阿南市農業委員会

徳島県阿南市農業委員会(萩野敏則会長)が農業委員を中心に農地中間管理事業を進め、成果を出している。農地中間管理機構を通じた貸借は、2014年度に21ヘクタール、2015年度に39ヘクタール、2016年度には46ヘクタールと年々増加。3年間で106ヘクタールになった。担い手への集積率は3年間で3.3%上昇し、21.2%に上向いた。
農業委員は日常的に担当地区を巡回。農地パトロールだけでなく、常日頃の見回りで地域の農地を詳細に把握し、集積の土台を築いた。この情報を基に、地元農業者からの農地相談を一手に引き受け、マッチングにつなげた。
中野島地区横見地域では萩野会長(70)が自らコーディネーターとして調整した。一番大きい案件では3ヘクタールの農地をマッチング。集積の途中で受け手が亡くなり、一時は受け手不在となったが、地元農業者に農地の利用を呼びかけ貸借を実現した。
こうした農業委員の活躍のきっかけになったのが、人・農地プランの策定を契機に市内14地区で開いた事業説明会だった。農業委員も説明会に参加し、地元農業者と農地利用を徹底的に話し合った。説明会には国や県の担当者も参加して、委員を後押しした。1地区で3回の説明会を実施したこともあった。
事業主体となる農林水産課では「信頼のある農業委員さんだからこそ地域の農業者が相談できる。農業委員さんが調整したことで農地のマッチングがスムーズに進んだ」と話す。
萩野会長は「集積を図るためには地域全体から理解を得ることが一番重要。農業委員を中心とした説明が地域農業者一人一人の意識に浸透し、農業者が地域農業について考えるようになった」と地域に起きた変化を指摘する。
同市は水稲が大半の水田地帯。基盤整備が80%まで進むなど、以前から圃場の整備は進んでいた。その一方で、農地の分散錯圃や担い手の高齢化、後継者不足が悩みの種となっていた。委員会の進める農地の集積・集約化は、こうした課題を改善すると地域から期待されている。
委員会は来年6月に新体制へ移行する。現在の37人体制から農業委員19人と農地利用最適化推進委員18人へと変わる見通し。これまで調整役となっていた農業委員に新しく設置する推進委員の力を加えて、農地利用の最適化をさらに進めていく考えだ。
萩野会長は「地域の隅々まで農家の事情を把握する人に推進委員になってもらい、これまで以上に集積を進めたい」と話す。
写真説明=農業者と膝を詰めて農地中間管理事業を周知した中野島地区横見地域