農地を活かし担い手を応援する 耕作放棄地解消に向け農地パトロール 富山・魚津市農業委員会

進む解消策

 富山県の東部に位置する魚津市は、市域の約7割が標高200メートル以上の山地で占められている。耕作放棄地は中山間地域に多いが、市街地でも、宅地化の進行や農地が狭く農機具の進入が難しいことから耕作放棄地が増加している。魚津市農業委員会(杉山篤勇会長)では、その解消に向けて農地パトロールに取り組んでいる。

 同市では、水稲を中心に野菜・果樹などの園芸作物や畜産など多岐にわたって農業が営まれている。経営耕作総面積は1868ヘクタールで、耕作放棄地はここ数年10ヘクタール前後で推移している。鳥獣被害による営農意欲の減退や後継者不足が耕作放棄地を生じさせており、今後は相続の放棄によって耕作放棄地が増加することが懸念されるという。
 同市農業委員会は、農地パトロールを毎年8月から9月にかけて実施しており、今年は8月29日に出発式を行った。パトロールでは、耕作放棄地と耕作放棄地になる恐れのある農地のほか、鳥獣被害に遭っている農地や権利関係が複雑になっているため権利設定できない農地を重点的に調査した。
 調査結果は、9月と10月の総会で報告した。
 今回のパトロールは、7月の新体制移行から間もなかったため、従来どおりの方法で実施したが、今後は新たにマニュアルを作成する予定だ。また、利用意向調査を巡っては、相続人が多いため確認に時間を要する農地があり、調査票の回収にも課題がある。一方で、農地中間管理事業や農地利用集積円滑化事業によって耕作放棄地の担い手への集約が進んでいる。また、集落単位で開催される座談会では「人・農地プラン」について積極的な話し合いがなされている。さらに、農業委員会が所有者に粘り強く働きかけた結果、耕作放棄地の保全管理がなされるようになった事例もある。
 杉山会長は、相続が放棄されて農地が管理されない事例や相続人が県外に転出して農地が有効に活用されない事例など、相続にからむ耕作放棄地の増加を憂慮している。このような課題に対処するため、杉山会長は、委員と農業者とのつながりをつくる必要を感じている。今後は、委員が直接農地所有者に農地利用の意向を尋ねるアンケートを配布するなど、活発な現場活動を展開していきたいと考えている。

写真上=8月29日に行った農地パトロールの出発式

写真下=のぼり旗を掲げて農地パトロールを実施