新生農委 2年で集積率20%上昇 群馬・明和町農業委員会

群馬県の明和町農業委員会(須永賢一会長)が農業委員の働きかけで農地の集積・集約を進めている。農業委員は地域の話し合いに加わり、時には地権者や担い手を戸別訪問。農地中間管理事業などの事業を活用して畦畔除去や均平化など、担い手が耕作しやすい環境づくりにも力を入れる。担い手の立場になった利用調整によって、集積率は急上昇中だ。
担い手への集積率は約50%。多面的機能支払交付金への取り組みをきっかけとして地域の話し合いが盛んになり、ここ2年で20%近く上がった。農地中間管理事業を通じた貸借は、昨年度が80ヘクタール、本年度が11月までに62ヘクタールに増えた。
同町は関東平野にある米麦地帯。集積・集約に適した平野部ながら、区画が狭いことが課題だった。1筆当たり10アール前後の圃場が多く、共同の苗場だったところでは5アール未満のままと、効率的な農地利用を妨げる原因になっていた。
須永会長(69)は「リタイア農家が増え、1人当たりの耕作面積を大きくしないとどんどん遊休化する恐れがある。担い手に利用してもらうためには、農地を使いやすくしなければならない」と話す。
農業委員も思いを共有。矢島地区では、中間事業の地域集積協力金を使って畦抜きや均平化を行い、1枚を30〜50アールに広げた。苗場だった小さな圃場は15筆を1枚にまとめた。
地区代表の農業委員・石秀文さん(73)は地域の座談会に参加し、担い手と地権者を橋渡しした。「担い手が耕作しやすくということを一番に考えた。座談会で理解してもらえない地権者には自宅まで行って理解を求めた」という。
会長職務代理の多田廣市さん(70)の下江黒地区でも話し合いが進む。26ヘクタールの地区農地すべてを中間事業に乗せ、新設された基盤整備の農地中間管理機構関連事業を使って地元負担ゼロで集約するつもりだ。
委員会では、町や中間機構などの関係者による農地利用最適化推進会議を今年から始めた。色分けした農地図を使い、マッチングや遊休農地の状況を関係者全員で確認。さらなる集積・集約化を一丸で後押ししていく。
こうした農地利用の最適化に刺激され、町の農業には前向きな変化が表れるようになった。若手農家の一部は、野菜の契約栽培を始め、複合経営に移行。法人設立や認定農業者数もここ数年急激に伸びている。
須永会長は「今後も担い手のための環境整備に力を注いでいきたい」と力強く話す。
写真説明=農地図を見る(右から)須永会長、多田会長職務代理、石さん