農地を活かし担い手を応援する 耕作放棄地解消へ 宮崎・日南市農業委員会


日南市農業委員会(山中長茂会長)では、遊休農地解消対策の一環として、耕作放棄地再生利用緊急対策交付金を活用して、荒れた樹園地の雑木・雑草の除去や土壌改良・整地、再生農地への苗木の定植といった再生整備に取り組んでいる。
日南市は宮崎県の南部に位置し、その面積の78%が山林で形成されている中山間地域だ。
温暖な気候と豊富な日照量を生かした超早場米、完熟きんかん「たまたま」や温州みかんなどの柑橘類、花卉などの栽培が盛んだが、高齢化や後継者不足により、管内の農地面積2806ヘクタールのうち、106ヘクタールが遊休農地となっており、今後も増加が懸念されている。特に柑橘類は同地域の基幹品目の一つとなっており、早急な耕作放棄地対策が必要となっている。
このような中、農業委員会では、農業委員が農地パトロールにより状況を確認。意向調査などを行う中で、後継者が確保され、規模拡大に意欲的な経営体を把握した。
そこで、農地相談員を中心に農業者からの聞き取りを進めるとともに、農業委員や事務局職員が近隣園地の確認を行うなど、事業計画の組み立てを支援してきた。
事業で特徴的なのが、農業者が樹園地管理のために元々所有していたショベルカーやブルドーザーを活用した直営施工で進められたこと。事業費の軽減に加え、農作業の合間に再生作業を行うなど、経営に負担のない形で作業が行われている。
また、剪定・収穫などの省力化・効率化のため、スピードスプレヤーなどの大型農業機械が通れるように造成したり、労力分散や6次産業化を視野に、レモンやライムといった香酸柑橘類を新たに定植するなど、より一層の経営改善・発展に向けた取り組みも図られている。
鳥獣害対策や、労働力確保など、再生した農地で今後も安定した営農が継続できるよう、引き続き関係機関・団体と連携した支援を進める必要があるなど課題も多いが、同交付金を活用して再生された農地は、水田・畑も含め、2016年度までに54件、約30ヘクタールとなっており、遊休農地解消に向けた機運は高まってきている。
同農業委員会は、来年7月に新制度に移行する。今後も、引き続き遊休農地の解消や農地中間管理事業を活用した担い手への農地の集積など、農地利用の最適化の推進に取り組んでいくこととしている。
写真説明=耕作放棄地再生利用緊急対策交付金を活用した農地の再生・整備((上)が施行前、(下)が現在)