遊休農地で花いっぱい運動 石川・小松市農業委員会

石川県の小松市農業委員会(本田雅昭会長)では、農業委員が遊休農地や農道などに花を植える活動に4年前から取り組んでいる。子供たちに楽しんでもらおうと、通学路に面した農道の側面に昨秋、リコリス(彼岸花)を植えた本田会長(73)は「球根を年々増やしていって、多くの委員が多くの農地で花いっぱい運動に取り組めるようにしたい」と話す。
第66回全国植樹祭が小松市の木場潟公園で2015年に開催された。この前年に同市が「フローラルこまつ」を策定。市民とともに花と緑があふれる美しい町づくりを始めた。
農業委員会でもこうした市の取り組みを応援しようと2016年に遊休農地解消・活用検討会を委員11人で設置。農業委員自らが地域の耕作放棄地や自分の農地、農道などに花の種をまく「花いっぱい運動」を始めた。
最初の2年間は地力増進作物でもあるクリムソンクローバー40キロの種を27人の全委員に配布。計1.3ヘクタールの農地などに種がまかれた。クリムソンクローバーは花の形から「ストロベリーキャンドル」とも呼ばれている。秋にまいた種が翌春、穂状に赤い花が一斉に咲き、見る人をいやした。
3年目となる昨年度はキカラシ(菜の花に似た黄色い花)の種36キロを全委員に配布。計1.2ヘクタールの土地にまかれたキカラシは翌春には黄色い花を咲かせ、春の訪れを市民に告げた。
昨年7月、農業委員会が新制度へ移行したのを機に、遊休農地解消・活用検討会を遊休農地解消検討委員会に名称を変更。農業委員の定数減少にあわせ委員9人で構成することにした。
同年8月に活動方針を決定。本年度はリコリスの球根を植えることに決めた。リコリスにはモグラやイノシシを遠ざける効果があるといわれている。農村景観の維持・保全に加え、年々増加するイノシシ被害の軽減に少しでも役立てばと一石二鳥を狙った。
だが、花の種とは違ってリコリスは球根で植えるため、予算の関係から球根は200球しか用意できなかった。このため、球根は会長と3人の女性農業委員に限定して配布された。
「畑のミカンの木の横に植えました。私よりも夫のほうが張り切って植えました」と川畑眞知子さん(72)。「自宅の近くの土手に植えました。黄色のリコリスは珍しいので楽しみです」と山下益美さん(57)。「プランターに植えて町内のゴミ集積場に置きました。花が咲くのをみんな楽しみにしています」と西木戸和枝さん(54)。それぞれ地域の多くの人に見てもらう場所を選んで球根を植えた。
昨年12月中旬には芽が出て、順調に育っている。3人の女性委員たちは花を通じて、「農業委員会ではこんな活動もしています」と地域の人たちに活動をPRしている。
写真上=赤い花を咲かせたクリムソンクローバー(2016年4月、本田会長の農地で)
写真下=本田会長(前)と3人の女性農業委員(後列左から川畑さん、山下さん、西木戸さん)