多彩な手段で農地最適化 農福連携で遊休農地解消 和歌山・上富田町農業委員会
和歌山県の南西部に位置する西牟婁郡上富田町では、町の中央部を富田川が流れ、年間の平均気温18度という温暖な気候を生かして、水稲やウメ、ミカン、スモモなどの栽培が盛んに行われている。上富田町農業委員会(岡本智郁会長・農業委員8人、農地利用最適化推進委員8人)は、昨年に新体制へ移行。多彩な担い手支援による、農地利用の最適化に取り組んでいる。
同委員会は、昨年2月に新体制へ移行し、農業委員と推進委員の役割分担を明確にした。
農業委員は従来どおり農地法の審議や農業者年金業務に取り組む一方、推進委員は遊休農地の発生防止・解消、担い手への農地集積・集約化、新規参入の促進の3点に特化。農地パトロールは両委員が合同で実施することとした。
特に推進委員は日常業務の一環として、和歌山県農業公社(農地中間管理機構)から業務委託を受けているJA紀南の担当者と連携。農地の出し手と担い手の間に入り、貸借条件の事前協議など、農地の利用調整活動を行っている。
また、担い手などの要望に応じ、時には推進委員自らが遊休農地の草刈りや、整地などを担い、農地中間管理事業の活用につなげたり、借り受けた農地に隣接する駐車場の確保のための交渉を行うなど、幅広い現場活動を「地域の顔役」として担っている。
本年度の同事業の活用実績は23件、面積は3万8753平方メートルとなっている(昨年12月末現在)。
同委員会は、ダイコンなどの農作物の加工・販売などによる障がい者の就労支援を行うNPO法人はまゆう作業所(深瀬幸子理事長)と、農福連携による遊休農地対策に取り組んでいる。
中心となって活動を担うのが、井戸本淨推進委員(68)と田上順也推進委員(61)の2人だ。
両推進委員は、規模拡大を目指す同法人と農地所有者の間に入り、利用調整に尽力。その結果、同法人による農地の貸借実績はこれまでに23筆、約1.2ヘクタールとなった。そのうち9筆、6千平方メートルについては、遊休農地化していた状態から、作付けするまでに解消した。
同法人の職員の庄田加奈子さんは「農地所有者との交渉や農地の情報提供など、推進委員が多くのことを担っていただけるので、とてもありがたいです」と話している。
井戸本推進委員は「農地が耕作されていない状態をもったいないと感じたのが、私の活動の原点です。まだまだ課題は多いですが、農業委員会として幅広い活動を行い、次の世代に農業の魅力を伝えていければ」と抱負を語った。
写真上=解消された遊休農地と井戸本推進委員
写真下=はまゆう作業所の出荷調製作業