農地を活かし 担い手を応援する 遊休農地の発生防止・解消 鹿児島 日置市農業委員会

定住促進を支援
鹿児島県の日置市では2017年5月から、農地法第3条で定める下限面積について、農用地区域内農地では20アール、農用地区域外農地では1アールに引き下げた。農用地区域外での下限面積1アールは県内では初めての取り組みだ。
中山間地域の多い同市では、農業従事者の高齢化や担い手不足により、遊休農地の発生防止、解消対策が喫緊の課題だ。一方、鹿児島市に近いなどの有利性、また「空き家バンク制度」がスタートし、移住希望者から家庭菜園として利用したいとの希望が多かったが、当時の下限面積は農用地区域内・区域外とも30アールで、面積が広すぎて希望に沿えないケースが多かった。
そこで日置市農業委員会(馬塲惠三郎会長)では、下限面積の引き下げに向けて他県での研修や情報収集、県との意見交換などを踏まえ、農業委員会の総会で検討を進めた。最終的に昨年4月の農業委員会総会で決定。市の広報誌やホームページで市民に周知し、5月からスタートした。
運用開始後、農地法第3条の申請件数は大幅に増加。特に1アールへの下限面積変更に伴う申請は、昨年5月から今年1月までで34件を数える。昨年9月から同市の空き家バンク制度を利用し、夫婦で伊集院地区に移住した木村春美さん(53)もその一人だ。
もともと畑仕事がしたかった春美さん。多くの候補の中で今回の物件には畑もあったことが、決め手になったという。「毎日の野菜の虫取りが大変です」と笑い、農業ができる喜びを実感している。「地域の皆さんにとてもよくしていただいています」と話す春美さん。最近はグラウンド・ゴルフに誘われ、最年少メンバーで頑張っている。転勤族だったご主人の一宏さんも日曜大工を満喫するなど、夫婦で充実した日々を送っている。
下限面積の引き下げに併せ、農業委員会では権利取得前の経営面積がゼロ平方メートルの者、権利取得時に農地が遊休化しており、申請時に営農計画書を添付した者に対し、許可後6カ月経過時と1年経過時の耕作状況を調査している。投機目的での権利取得の防止や農地の適正管理を促す狙いだ。
馬塲会長は「担い手への農地集積・集約はしっかり進めていくが、担い手が使いにくい農地もある。そういう農地に定年を迎えた人、県外からの移住者で農業をしたい人が、やりやすい環境を整えてあげることも大切。将来的に農家になるきっかけになれば」と話す。
写真説明=「一生懸命取り組んでおられてとてもうれしい」と話す馬塲会長(右)と木村さん