法人化・設立支援、農地集積に力 2014年度より6法人設立 岐阜・輪之内町農業委員会

輪之内町農業委員会(棚橋政行会長)は、集落営農の法人化・新規設立支援、農地の集積に力を入れている。同町は、2014年度以降に設立された法人が6法人と、県内で新規設立数が最も多く、担い手への農地集積率も57%まで高まり、国が目指す80%達成へ向け、農業委員・農地利用最適化推進委員が一丸となって取り組んでいる。
岐阜県南部に位置する輪之内町は、長良川と揖斐川に挟まれた「輪中」の地で、水田経営を中心に、地区ごとに集落営農が多数存在しているのが特徴だ。経営所得安定対策に加入する集落営農は、5年後の法人化が義務付けられていたことから、2014〜2016年に法人化検討会が多く開かれた。
検討会では、農業委員会からの要請で県農業会議が委嘱する税理士や司法書士など農業経営改善スペシャリストを派遣。財産の引き継ぎや事業計画、定款作成などをサポートしている。また、各地区の農業委員・推進委員が組合員や役員として中核となっているケースも多く、農地所有者は「安心して農地を預けられる」と自然と農地が法人に集まる流れができつつある。
法人化が進んだことによるメリットは大きい。農業委員・推進委員が農地の受け手と出し手の利用調整を進めるに当たり、頼られる存在となっていること、兼業農家などが耕作できなくなった時に安心して農地を貸し付けられる担い手ができたこと、法人の役員は任意組織では受け取っていなかった責任相応の役員報酬を受け取れることで、励みになっていることなどが原動力になった。
(農)メガファーム岐阜四郷南(中島章隆代表理事)は、2016年10月に法人を設立した。同町で唯一、四郷南部地区には母体となる任意組織がなく、ゼロから法人を立ち上げた事例として注目されている。これまでも、農地を守るため、兼業農家などが工夫や協力をしながら営農していたが、年々「経営として成り立たない」「農業は自分の代で終わり」「農地を預けたい」といった声が高まり、飼料用米など主食用米以外の作付けを地区でまとまって対応することも目指し、法人立ち上げにかじを切った。
法人設立時に35ヘクタールであった経営農地は、1年間で45ヘクタールまで拡大。農業委員・推進委員の力もあり、順調に農地集積が進んでいる。また、今年は約40アールの遊休農地を再生するなどの取り組みも行っている。
同地区の農業委員で元会長の山内光昭さんは「法人に農地が集まるようになったが、役員が全員60代であり、次世代へのバトンタッチが課題となっている。今後もメガファームに農地の受け皿として地区を引っ張ってもらうためにも、委員会として次世代の育成へ向けて支援が必要」と話す。
写真説明=久保和英司法書士(写真中央奥)からアドバイスを受ける集落関係者