山稜に農村散在し遊休地増加 最適化へ農委会一丸 山口・周南市農業委員会

 山口県東南部に位置する周南市は、南に瀬戸内海を望み、その海岸線に沿って全国でも有数の大規模工場が立地し、北に中国山地を仰ぎその広大な山稜に農山村地帯が散在している。そのため中山間部の農地が多く、農業従事者の高齢化、後継者不足等により遊休農地が増加傾向にある。そのような状況ではあるが、農地利用の最適化に向けて農業委員会は一丸となって取り組んでいる。

 周南市農業委員会は、2017年7月から新体制(農業委員19人、うち女性3人、農地利用最適化推進委員32人、うち女性4人)に移行し、遊休農地の解消など農地利用の最適化に一丸となって取り組んでいる。移行後すぐに農地パトロール(利用状況調査)を実施する必要があったため、利用状況調査研修会を開き、(1)耕作中の農地(2)自己保全管理の農地(3)再生利用が可能(4)再生利用が困難と見込まれる農地(5)土地の所在が特定できない農地――の5段階の判断の目合わせをプロジェクターを用いて行い、現場用には写真を配布した。
 推進委員を主体に農業委員と連携して取り組んだ利用状況調査では、全6万1721筆を多面的機能交付金や中山間地域支払交付金の対象地域を外し、ゼンリン地図や公図、地籍図などを用いて全筆調査を8月10日から10月中旬にかけて実施した。

 利用状況調査後、推進委員からは「土地を特定することが難しかった」「現況と図面が合わなかった」「再生利用が可能かどうかの判断が難しい」などの声が聞こえた。地域を歩く中で、今農地を集積している人も既に限界にきている現状も見えてきた。
 また、利用状況調査後に行った郵送による意向調査では、高齢化による限界、鳥獣による被害、耕作者が減ったことにより水路が維持できないなど、農家の悲鳴が聞こえてきた。調査結果については現在取りまとめ中だが、これらの調査結果を踏まえて本年度の利用状況調査を実施し、今後の農地の利用集積に役立てていきたい考えだ。

 新規就農支援では、2016年には3件、2017年には1件のあっせん会議を開いた。そのうち2件は果樹園の第三者継承で、農地の確保や手続きはもちろん、住居の確保、技術指導など、地元生産組合や関係機関と連携して就農を支援した。これら4組の新規就農者は地域の大きな刺激となっている。
 事務局は条例を改正し、これらの活動実績や成果実績に対して、農地利用最適化交付金による手当や報酬を支払い、委員の活動を後押しした。
 遊休農地解消、新規就農者確保・支援、担い手への農地利用集積の3本柱を目標に掲げて農業委員、農地利用最適化推進委員、事務局が一体となって取り組んでいく。

写真上=利用状況調査研修会を開き、5段階の農地判断の目合わせを行った

写真下=2017年8〜10月中旬に実施した利用状況調査