農業経営意向調査で全農家を訪問 全委員が地域を知り、地域が委員を知る 宮城・富谷市農業委員会
富谷市は仙台市に接するベッドタウンで、人口5万人と急速に増えている半面、農業の担い手は減少し、高齢化が進行している。地域の実情を知ることが重要との認識から、農業委員7人と農地利用最適化推進委員8人が市内の全農家423戸を訪問し、農家の意見を直接聞いた。
富谷市では以前から農業経営意向調査を実施していたが、市の農政協力員が行うため、農業委員会ではこれを農地台帳の整理など間接的に利用していた。こうした中、2017年に農業委員会が新体制に移行した最初の総会で「推進委員はどのような活動をするべきか」を討議した。佐藤政悦会長の「地域の実情を知らなければ方策は出てこない」との意見もあり、農業委員と推進委員が農業経営意向調査を行い、全戸訪問することとなった。浅野雅子次長は「農地を守るに当たり、推進委員には現場の意見を肌で感じてきてもらいたいという会長の強い思いがあった」と語る。
全戸訪問は2017年12月から翌年1月にかけて実施され、農業委員と推進委員の2人が一組になり、推進委員が担当する地区の農家平均50〜60戸に対して、調査票の配布と回収のために2回訪問した。
最初の訪問では顔合わせと調査の協力依頼に終わっていたが、2回目の訪問では、「農地を貸したい」「農地の転用を考えている」などの農家の生の声をたくさん聞くことができた。その後も、委員に対して農家から相談することが多くなり、「委員の活動は農家との対話が大切」との意識が委員に芽生えてきた。また農家からも「委員と話しやすくなった」「委員会の風通しが良くなった」との声が上がっている。
調査結果によれば、「農地を新たに借り受けしたい意向の農家」はあまりおらず、多くは「農地を貸したい」または「宅地などに転用したい」との意向に大別されることが分かった。
2018年2月の農業委員会総会で、農業委員と推進委員の全員で調査結果について議論したところ、「農地を借り受けできる担い手を早く見つけ、育成することが課題」との意見が集中した。これを契機に総会は推進委員全員参加での協議が恒例となっている。
また、調査結果は「人・農地プラン」の見直し検討に活用され、市の農政にも反映されることとなった。
齋藤英夫事務局長は「今後調査を継続し、耕作放棄地の解消や法人経営体の設立支援のために活用したい」と意気込みを語る。
写真上=左から齋藤事務局長、佐藤会長、浅野次長
写真下=農家を訪問し、農業者から意見を聞く農業委員会