農地利用の最適化最前線(3) 委員が率先して遊休農地解消 沖縄・うるま市農業委員会

沖縄県うるま市農業委員会(山口榮勝会長)は、2011年度からの2年間で50ヘクタールの遊休農地を解消した。秘訣は地域の農業者や住民との意思疎通を密にしたこと。戸別訪問での利用意向調査や活動の「見える化」で地域との距離を縮めた。
利用意向調査では、耕作できない理由を聞くなど親身に相談に応じた。農地を貸したら戻ってこないのではと不安を抱える人には、利用権を設定すれば必ず戻ってくると丁寧に説明。地道な話し合いが、営農再開や農地の流動化に結び付いた。
2013年には、農業委員会の活動の実態が分からないという地元住民の声を受け、行動計画の「うるま市農業委員会・見える化行動」を総会で決定。市内の12カ所に農地の利活用を促す横断幕を設置した。JAなどと協力して、さらなるマッチングにも取り組んだ。
2015年には50アールの遊休農地を農業委員会が自ら借り受け、委員総出でサトウキビ畑に再生した。この活動は現在も続き、66アールの農地を委員会で管理している。ジャガイモを作付けし近隣の保育園児を収穫体験に招くなど、積極的に地域と交流する。
こうして再生した遊休農地は、委員らが協力していつでも利用できる状態に保つ。担い手や新規就農者への受け渡しを円滑にする狙いもある。山城長徳副会長(68)は「自分の畑もある中で大変だが、とにかく遊休農地をなくしていきたい」と語る。
同委員会は今年4月に農業委員14人と農地利用最適化推進委員16人の新体制に移行した。遊休農地解消に向けて戸別訪問や見える化に継続して取り組む他、農地の情報提供やあっせんにも力を入れる。
熱帯果樹などの栽培が盛んな同市には市内外から新規就農の希望が多く寄せられ、順番待ちが出るほど。一刻も早く最新の農地情報を提供するため、同委員会は全国に先駆け5月から農地パトロールを始めた。順次意向調査に移り、得た情報は「人・農地プラン意見交換会」で新規就農者や担い手と共有する。意見交換会は市農政課との共催で、市内の12地区で実施する。
同委員会は、2026年までに48ヘクタールの遊休農地解消を目標に掲げる。事務局は「農地の情報提供がまず必要。関係各所と連携して確実に成果を上げていきたい」と意欲をみせる。
写真説明=農業委員会で再生した農地を前に、山城副会長(右)と伊波薫推進委員