農地集積・担い手確保を推進 奈良・五條市農業委員会

 奈良県の南西部に位置する五條市は、国内でも有数の柿の産地で農業が盛んな地域だが、近年は全国的に問題となっている農業の担い手の減少や、高齢化が進み遊休農地が増えている。五條市農業委員会(新宅一也会長)では、遊休農地の発生防止・解消活動を実践し、農地の有効活用を図るための一つの手法として、農地中間管理機構を活用した農地集積を進め、地域の農地を守っていこうと奮闘している。

 総会など農業委員や農地利用最適化推進委員が集まる時に、新宅会長が必ず「積極的に機構を活用していこう」との思いを伝えるなど、農地中間管理事業の推進に向けた組織体制づくりの強化にこれまで取り組んできた。
 地域のリーダーでもある委員自らも積極的に機構を活用して農地を集積した結果、地域の農業者にも機構関係の制度への理解が進んだ。高齢化が進行する上丹原地区では、集落営農組織を立ち上げ、機構を活用し、農地を集積することで地域全域の農地を守っていこうとする動きが芽生えたという。農業委員会では、このような優良事例を市内農業者へ周知し、1カ所でも多くの集落で取り組みが進むことを期待している。
 農地集積を進める上で、活用できる農地を特定することが重要なため、同農業委員会では本年度から、より積極的に農地パトロールに取り組む方針だ。特に、非農地判断を進めることが必要と考え、8月の総会終了後に全ての農業委員や推進委員に具体的な判断基準などを説明した。山の中にあるなど調査が困難な農地はドローンを活用して確認し、機構へ情報提供することにしている。
 担い手が地域に定着し、農地集積の受け皿になってほしいとの考えから、担い手の老後生活の安定のため農業者年金の加入推進にも力を注いでいる。
 市内の柿農家を中心に若い農業後継者が定着している地区も多くあるため、農業委員会の職員による若手農業者への戸別訪問活動や、県農業会議から講師を呼んで説明会を開き、昨年度は6人の新規加入者を確保した。
 本年度は、農業者が作業中にラジオを聞いているということもあり、農業者年金制度を地域のFMラジオで伝えるなど、周知活動に取り組む予定だ。
 「地域で農業の担い手の育成や確保を進めつつ、活用すべき農地を特定して機構と連携し、利用集積を進める。農地の有効活用に向けて取り組みを強化していく」と新宅会長は話す。

写真上=非農地判断について説明を聞く農業委員・推進委員ら

写真下=地域の農地等を確認する農業委員ら