農地利用の最適化最前線(4) 耕作地交換テーマに情報交換会 山形・鶴岡市農業委員会

担い手への農地集積率が80%を超える山形県鶴岡市農業委員会(渡部長和会長)が、担い手間の話し合いによる農地集約化を進めている。昨年度は試験的に1地区で耕作地の交換をテーマにした情報交換会を開いた。その場で水田7筆(3.2ヘクタール)の利用権交換が決まり、これを引き金にその後さらに6筆(2.9ヘクタール)の交換もまとまった。委員会では「情報交換会によって大きな歯車が動いてきた」と手応えを感じている。
情報交換会は市単独の農地集約モデル事業として昨年12月に初めて開かれた。水田の圃場条件や賃借料がほぼ同じという藤島地域八栄島地区の担い手9経営体が参加。農業委員や農地利用最適化推進委員、農地中間管理機構、市農政課など地域の関係者も勢ぞろいして、農地図を囲みながら交換可能な圃場がないか検討した。これまでなかった新たな試みに議論が弾み、その日のうちに7筆の利用権を交換する話がまとまった。
これで話し合いの土俵ができたため、地区ではさらなる耕作地の交換を検討。後日、6筆の交換が決まった。1回の情報交換会が13筆(6.1ヘクタール)の農地を動かした。これらの農地は地権者の了解も取り付けて、機構を通じた貸借を成立させた。三浦市樹事務局長は「話し合いのテーブルができれば、後は集落で調整してもらえる。最終的には市の全域で情報交換会をやっていきたい」と話す。
同市は農地の集積率が80.3%と模範的に農地集積を進めてきた。人・農地プランは188を制定し、全ての集落をカバーするきめ細やかさだ。しかし、近年は離農が相次ぎ、受け手となった担い手の分散錯圃などの課題が浮き彫りになっていた。担い手からは集約を求める声が強くなり、人・農地プランのような丁寧な合意形成だけではこの要望に応えるのが難しくなっていた。
こうした事態に素早く対応できると期待の大きい情報交換会は、市内11地区に設けられた農用地利用等調整委員会を通じて市全域に広める予定だ。調整委員会は全地区で推進委員が会長となり、農業委員やJA理事、認定農業者の代表などで構成する地域農業者の代表的な存在。農業委員会は調整委員会との連携を強化して、担い手が営農しやすい環境を整えていく。
同市農業委員会は昨年11月に新体制へ移行した。20人の農業委員と31人の推進委員は、各地域でチームになって一体的に活動する。離農者の元へは必ず出向いて機構へ貸し出すように促すなど、地域に入り込んだ活動を展開中だ。三浦事務局長は「人・農地プランによる地域の合意形成が大事なのは今後も変わらない。ただ、同時並行して情報交換会による耕作地の交換も積極的に進める」と話す。
写真説明=担い手を中心に関係者全員で耕作地の交換を検討