農家にアンケート 課題に的確な対応 山口・周防大島町農業委員会

 山口県東南部に位置する周防大島町は、瀬戸内海で3番目に大きな島で、瀬戸内のハワイとも呼ばれ、温暖で青く澄み渡る海と自然が人気の観光地だ。しかし、全般的に山岳起伏の斜地で大半を山地が占めており、「みかんの島」とも呼ばれ柑橘栽培が盛んな土地だが、高齢化による出荷量の減少、担い手不足など課題も多い。新体制に移行した農業委員会では、アンケート調査を行うなど実態把握に力を入れている。

 周防大島町農業委員会(安本貞敏会長)は、2017年7月から新体制(農業委員14人(うち女性2人)、農地利用最適化推進委員21人)に移行した。
 農業委員会は、町内の農地と営農の実態や要望を把握し、農業委員と推進委員の現場活動に生かしてもらうため、2月に「農地と営農に関するアンケート」を実施。30アール以上作っている農家を対象とした抽出調査で、約千部を農業委員や推進委員が直接配布した。
 調査の結果(回収率約5割)、回答者の6割は70代以上で、85%は後継者がおらず、そのめどもついていなかったり、同居していても農業をしていないという事が分かった。また、「地域に農業を任せられる担い手がいない」とした回答者も75%おり、高齢化、担い手不足の実態が浮き彫りになった。事務局は、委員を旧町単位でブロック分けし、調査結果で明らかになった地域全体の課題を委員同士が共有できるように情報を提供。併せて委員の担当区域の回答を配布し、個別相談対応へ生かしてもらうように依頼した。さらに事務局は、委員の活動を後押しするため条例を改正し、活動実績や成果実績に対して農地利用最適化交付金による手当や報酬を支払える体制を整えた。

 アンケートの調査結果からも、新規就農者・担い手対策が喫緊の課題となっている。同町は温暖な気候を生かし、県内で柑橘出荷量の90%以上を占める中心的産地だが、昭和50年代初頭には8万トンあった出荷量が高齢化の進行や担い手不足で、現在は5千トンまで減少した。産地維持のため、町では担い手の募集に努めており、近年は新規就農者が徐々に増えている。農業委員会ではそういった新規就農者へ優良農地をしっかり引き継ぎたいと、農地の利用状況調査にも力を入れて取り組んでおり、航空写真に地籍図を重ね3段階のランクに分ける形で確認している。調査結果は農業振興地域整備計画の全体見直しにも反映させる。
 また、安本会長は「自らの老後を支える財源として農業者年金を活用してほしい」と、委員会を挙げて新規就農者や担い手に積極的に農業者年金の加入推進に取り組んでおり、推進委員からも加入対象者などの情報が上がってくるようになった。
 農地を守りたい。優良農地の継承はもちろん、遊休農地の解消のためにも、農業委員会は農業委員、推進委員、事務局が一体となって新規参入者の確保・育成に取り組んでいく。

写真説明=現在実施している農地利用状況調査