活躍する女性会長 熊本・錦町農委会 石松 まゆ子会長、山鹿市農委会 坂本 照子会長
新たな農業委員会制度がスタートして、2年半が経過。農業分野でも女性が活躍する社会の創出が求められる中、熊本県内45農業委員会の中から活躍する2人の女性会長の話を聞いた。
「自分の考えで経営し、挑戦ができる農業は魅力のある職業」と声を弾ませる錦町農業委員会の石松まゆ子会長(67)。
農業委員になったきっかけは「農業者の半分は女性なのに、なぜ農業委員は男性だけの社会なのか? 女性が参画して意見を述べることで、農業・農村社会を変えられないか?」と思ったことだ。
「私は、農業が大好きだ、農業に夢がある。農業経営では誰にも負けない」と強い意志があった石松会長は、JAの女性部を経て2004年、公選により農業委員になった。2016年から会長職に就き、委員歴15年になる。農業委員、集落営農組織、農地・水・環境保全組合、さらには経営する農業法人の役員、そして自ら農作業に汗を流すなど多忙な毎日を送る。
「農業者の所得向上を図りたい」と考え、会長に就任以降、農業委員会とJA、行政を交えた意見交換や新規就農者との意見交換会などを開いている。また、地域ごとに開かれる営農座談会へ出向き、農業委員会の活動報告や情報提供も行う。
「農家がもうかれば後継者は増える。後継者が増えたら耕作放棄地の解消につながる」と力を込めた。
「悠久の農地を守るため、私たち農業委員と農地利用最適化推進委員には大きな使命がある」と静かに語る山鹿市農業委員会の坂本照子会長(68)。「農地を守るためには、農業後継者を地元に残さなければならない」と話し、新体制後の新たな取り組みとして、若手農業者など4Hクラブ(農業青年クラブ)との意見交換会を行う。
今から約20年前、夫の就農に伴い、会社員から花卉栽培農家になった坂本会長は「厳しさを知らずに農業に飛び込んだ」とほほ笑む。
就農当初の1998年、県の女性農業アドバイザーに就任。翌1999年には山鹿市男女共同参画推進の取り組みにも参加。同市の農業委員会協力員として農業委員のサポート役を6年間務めるなど、徐々に地域農業の世話役を果たした。当初、地元に顔見知りが少なかった坂本会長は、地元の農家へ頻繁に足を運び、農業委員会の情報を提供。農道の草刈りなどにも進んで参加し、信頼を得ていった。
2012年、公選により農業委員として就任。2015年度から会長職に就き、今年からの新体制でも2期目の会長を務める。熊本県農業会議の理事でもある。
「農業を知るということは、農作業だけではない。女性農業者が農地のこと、税のこと、農に係るさまざまなことを学ぶことは自分のためになり、わが家の経営や地域のためにもなる」と力を込める石松会長。
「山鹿市では、家族協定を結んだ認定農業者で実際に経営に携わる女性農業者が、農業委員として活動している」と話す坂本会長。
両会長は「女性農業者も、自ら積極的に行動し学び、さらに、自主的に活動する機会を持つことが大事だ」と同じ考えを持つ。
男女共同参画の視点から農業委員会活動の内容も考え、女性の意見を取り入れることで、委員会活動の活性化にもつながると考え、多くの女性農業者が委員として活躍してほしいと願っている。
写真説明=坂本会長(左)と石松会長