担い手支援と農地集積に力 岐阜・下呂市農業委員会

 岐阜県の中部に位置する下呂市は、全国でも有名な「下呂温泉」があり、観光名所として知られる。高冷地で夏期の冷涼な気候を生かし、近年は野菜の栽培が盛んに行われている。特に、市内で多く生産されている代表的な野菜「夏秋トマト」は、栽培を目指す新規就農者が増加。同市農業委員会(金森茂俊会長)では、新規就農・担い手支援と農地集積に力を入れ、さまざまな活動を展開している。

 同市農業委員会では、2015年度から、県内では先駆けて男性対象者を市内の農業後継者に限定した婚活イベント「農家に恋」を企画。4年目となる本年度は昨年11月11日に開き、男性13人、女性11人が参加し、4組のカップルが誕生した。
 同市には、県内に現在14カ所ある就農支援拠点の一つ「飛騨トマト研修農園in下呂」があり、農業経営を志す若者が毎年数人、研修を受けるため他市町村から参加している。研修後、同市内に移住・就農するケースが多く、こうした背景から担い手支援対策として、農業委員会を挙げて出会いの場の提供と、下呂市の野菜のおいしさを女性にPRする婚活イベントが始まった。
 イベントの運営に当たっては、農業委員・農地利用最適化推進委員の中から、婚活委員を決め、当日のプログラムや人集めを担当。近年、農業委員会が開く婚活イベントが全国的に増えてきたため、毎年内容を変えながら開催。本年度は男女が協力しながらのそば打ちやバーベキュー、男性参加者が栽培した野菜を使った天ぷらが提供された。
 同市農業委員会では、今後は隔年でのイベント開催に切り替え、委員からのアイデアを募集し、婚活イベントや新たな担い手支援策を検討していく考えだ。

 同市菅田地区では昨年11月、7カ所に分けて、農地集積に向けての説明会を開いた。内容は農地中間管理機構を通じた権利設定について。地権者、受け手となる農業法人役員のほか、県、市、委員など関係者が参加した。
 地権者には、機構を通した場合の協力金制度や、期間満了後の農地返還などの仕組みを説明。地権者からは、「これから先、農地を守ってくれるか」「10年後も更新をしてくれるか」といった将来を見据えた質問が多く出た。そうした中、同地区の中心的担い手の(有)すがたらいす(中島悠代表取締役)が農地の受け手となることを約束したことで出席者の多くが貸し付けに合意。12月に開かれた総会で、同地区の利用権設定をメインに50ヘクタールの農地集積を実現。農業委員会事務局と委員が連携して事業説明や書類の回収に走り回ったことで本年度の実績につながった。
 岐阜県では農地利用最適化の推進活動について、各市町村ごとに優良事例を一つ作ることを目標に掲げており、同市のような優良事例が横展開されることで他の農業委員会の活動強化につながることが期待される。

写真上=農業委員会主催の婚活イベント「農家に恋」のポスター

写真下=本年度の婚活イベントでは男性13人、女性11人が参加し、4組のカップルが誕生した