人・農地プラン実質化へ 地区ごとに方針を検討 福井・越前市農業委員会

 県の中央部に位置する越前市では、農業委員会(冨田隆会長)を中心に関係機関が連携し、人・農地プランの実質化と実践に取り組んでいる。各地区で、農業経営を持続するためにどうしていくかというアンケート調査と話し合いを実施して現状と課題を整理し、今後の方針を話し合っている。

農地の集積状況などを表した地図を見ながら話し合い

 越前市農業委員会では、2019年6月から人・農地プラン実質化への取り組みを開始した。74ある人・農地プランの担い手への集積率を整理し、50%に満たない集落を中心に実質化の取り組みを行った。

 話し合いに先立ち、同年8月に農業委員会事務局が、JAが開催する地区ごとの農家組合長会議の機会に人・農地プランの実質化について説明。農家組合長にはアンケートの配布と回収を依頼した。
 アンケートは認定農業者と集落営農組織を対象にしたものと家族経営と中小兼業農家を対象にしたものとに分けて実施した。調査の結果、現在耕作している人でも「規模を拡大していく人は少ない」「地元集落営農への委託を考えている人が多い」「後継者が決まっている人が少ない」などの課題が明らかになった。
 農業委員会事務局では、アンケートの分析結果を基に、現在の集積状況と10年後の耕作者の年齢分布などを表す地図を作製するなど、「見える化」の作業を進めた。また、参加者が発言しやすくなる工夫として、対象集落の農家組合長に「事前調査票」の作成を依頼。これにより集落内の話し合いが円滑に進んだ。

 話し合いには各集落の耕作者10~20人が出席するとともに、農業委員・農地利用最適化推進委員、農業委員会事務局、県農地中間管理機構、JA営農指導員、土地改良区がアドバイザーとして参画した。

 話し合いでは、将来の方針として、「担い手がいない地域では、担い手に耕作を任せた後も、地主をはじめ地域全体で草刈りなどできることは協力し、担い手が長く耕作してくれる環境を作る」「集落での特色を生かした栽培作物のブランド化をする」などの前向きな意見が出てきた。
 参加者からは、「地図があることで、集落の耕作状況や10年後には耕作者が70歳以上となる農地の増加傾向などが一目瞭然でわかり、危機感を抱いた」「農政改革や農業所得の経営支援につながる補助金の拡充など、抜本的解決策がないと厳しいのではないか」などの声が上がった。
 今後は各集落で話し合いを深め、実質化済みのプランの実践を進めるとともに、定期的なプランの見直しも行っていくこととしている。