農委会と行政の連携で人・農地プラン実質化実現 高知 四万十町農業委員会

 四万十町農業委員会(林幸一会長)は、町農林水産課との連携のもと、人・農地プランの実質化に向けた地域の話し合いなどに積極的に参画。県内で最も早くプランの実質化を実現し、作成されたプランは3月末に同町のホームページで公表された。

高齢農家が耕作している農地を
色分けした地図を見ながら
5年後の地域について話し合うみなさん

 四万十川の中流域にある同町は、支流に沿って132の農業集落が点在しており、地域によって農地の利用状況や営農類型が異なる。比較的平野部の多い地域は稲作が盛んで、農地中間管理事業を活用した担い手への農地利用の集積・集約化に取り組んでいる。一方、狭小で不整地な農地が多い中山間地域では遊休農地の発生防止・解消が課題だ。

 人・農地プランの実質化にあたっては、農林水産課職員が農業委員会に複数回出向き説明。農業委員・農地利用最適化推進委員は徐々に理解を深めていった。
 地域での話し合いの基礎資料となる農家対象のアンケートの作成にあたっては、同委員会と農林水産課が協議を重ね、全16項目とした。内容は、今後の経営意向や後継者の有無の他、農地の受け手を確保する対策として必要な取り組み、担い手の確保や育成のために必要な支援などについてだ。
 アンケートは町内在住の耕作者を対象に、2214世帯へ調査票を郵送。期日までの返却率は45%・992通と低かったため、回答がない耕作者には農業委員と推進委員が戸別訪問を行った。その結果、さらに約350通が集まって回収率は60.2%となり、対象地区の耕地面積の過半を集めることができた。
 話し合いは町内の全ての集落を対象に開催。2020年6月から2021年1月まで数集落をまとめて行い、全76カ所で実施した。話し合いでは、高齢農家が耕作をしている農地を色分けするなどした地図を使い、5年後の地域について話し合った。地域の現状が視覚的にすぐわかる地図を使うことで、地域の人たちの現状把握と認識の共有が進み、話し合いもうまくいった。
 進行役は農業委員会事務局と農林水産課職員が務め、JAや農業改良普及所など関係機関も参加。集落をよく知る農業委員と推進委員はアドバイザーとして参加し、助言や進行の手助けをした。

 林会長は「行政と農業委員会が一つにならなければ人・農地プランの実質化を成し遂げることはできなかった。農林水産課から十分な説明と具体的な協力依頼があったことで、農業委員と推進委員が役割を十分に果たせた。話し合いで集落の現状を把握できた成果は大きい。今後は話し合いで明らかになった地域の課題の解決への取り組みを進めていく必要がある」と話す。
 町と同委員会では、アンケートの分析結果を関係機関で共有し、意見の提出や農業政策にもつなげていきたい考え。また、今後も集落の話し合いを継続的に行っていくとともに、地域の農業の維持・発展に向けた取り組みを進めていくこととしている。