6ヘクタールの農地を担い手へ集積 岐阜・大野町農業委員会

 大野町農業委員会(加納準一会長)は、野地区担当の農地利用最適化推進委員の主導のもと、農地所有者と隣町の担い手との間を取り持ち、約6ヘクタールの農地を集積する成果を上げた。

野地区の農地をマッチングした水野推進委員

 同地区では、地盤が弱く大型農機が沈むことから、担い手が借り受けず、耕作されない水田が多いことが課題であった。2018年2月に耕作者の確保と暗渠排水工事の検討のため、地区担当推進委員の水野芳晴さんがマッチングに動き出した。
 同年3月、同委員会と連携して農地所有者や農業委員など18人を集め、話し合いを実施したが、地区内での受け手が見込めなかった。そこで、隣接する揖斐川町で養豚経営を行い、出作して広域で飼料用米の作付けを行う菖蒲谷牧場の山川忠一郎さんを候補に立てた。

 水野さんは山川さんと調整。昨年1年間、作業受委託で乾田直播栽培により飼料用米を作付けし、耕作できることを確認した。今年4月には農地約6ヘクタールに10年間の利用権が設定された。
 農地所有者29人の権利設定手続きは、地域の状況をよく知る水野さんや農業委員が戸別訪問し、わずか3日で完了した。耕作する山川さんは「地域で話をまとめてもらえたため、耕作が開始できた」と話す。

 農地所有者からは、耕作放棄地や草刈りしかしていなかった農地が耕作されたことから、喜びの声が聞かれている。水野さんは「地域の話し合いを通し、農地所有者や農業委員会事務局の全員が共通の問題意識を持ったことが円滑な手続きにつながった。日頃から農地所有者や農業委員と交流していたことが功を奏した」と話す。

 検討していた暗渠排水工事も、耕作してくれることになった山川さんの経営を支援するため、県の補助金を活用して実施していく手続きも進めている。

 農業委員会事務局は、今回の手法を一つの優良事例として捉え、研修会などにより農業委員・推進委員全員で情報の共有を図っている。さらに、地区ごとの関係者会議や住民説明会などを繰り返すことで課題を見極め、それぞれの地区に合った解決策や解決手法などを見つけ出し、担い手への利用集積を進めていくことが重要であると考えている。
 地区の話し合いをベースに、各委員がリーダーとなった取り組みを1事例1事例積み重ねるとともに、「決して諦めない」という思いを地域全体に広げてさらなる成果をあげていくことが期待されている。