耕作放棄地再生 担い手に集積へ 滋賀・草津市農業委員会

 草津市農業委員会(山本英裕会長)は今年1月、初めての試みとして農業委員や農地利用最適化推進委員の有志を中心に、市内の農用地区域内の耕作放棄地に自生したヤナギの木160本を伐採。本年度以降、抜根・整地に取り掛かり、担い手への集積・集約化に取り組もうとしている。

解消前の農地パトロールの様子

 この農地は圃場整備田であり、周辺の農地も担い手が耕作している。もともと所有者が米を作付けしていたが、高齢化により耕作・保全管理ができなくなったという。その後、ヤナギが自生し2019年には3メートルほどの高さまで成長。雑木林のような姿となり、周辺農地とは大きく様相が変化していった。
 同委員会は当該農地の遊休化の状況を航空写真と農地パトロールで確認。相続人に意向調査したところ「周辺の中心経営体へ貸し付けたい」との希望があったことから、有志と事務局で対応策を協議した。
 その中で、農業委員などが自ら遊休農地の解消に取り組む条件として、「周辺農地の耕作状況が良好であり、一団の連坦性がある」「農地として復元することにより、中心経営体の耕作が可能となり、集積・集約が見込まれる」ことなど5項目を申し合わせており、当該農地は、全項目が該当したため優先的に解消に取り組むことになった。

山本会長(右端の赤いトレーナーを着用)
有志が伐採した木を軽トラックに積み込んだ

 取り組みの当日は、有志と事務局の他、地元農業組合長や隣接農地を耕作する担い手も参加。地元の全面的な協力を得て、チェーンソーやのこぎりなど自前の工具を持参して伐採していった。軽トラック5台分に相当する量となったヤナギの木は、定期的にたき火会をしている近くの神社に事前に提供を持ち掛けたところ、薪に使いたいと快諾が得られたことから全て提供した。完了後は参加者から「以前と打って変わって見晴らしがよくなった」と喜びの声が聞かれた。
 根が深く張っていたことから重機での抜根が困難だったため、木の切り株に薬品を注入。半年から一年くらいかけて枯らした後、抜根・整地に取りかかるという。完了後は、水の張り具合などが隣接農地と変わっていないことなどの耕作条件を慎重に確認したうえで、隣接農地を耕作する担い手に貸し付けていきたいとしている。
 山本会長は、「今後も、圃場整備された優良農地で発生した遊休農地については、5項目の条件に合致すれば、個別に判断したうえで、解消対策に取り組んでいきたい」と話す。また、
「こうしたことにならないよう農業委員と推進委員が農地パトロールを徹底し、現地の状況に目を光らせていきたい」と意欲を語った。