農地を活かし担い手を応援する 第2部 農地利用の最適化(36) 農地中間管理事業を利用

秋田・由利本荘市農委会
 土地改良事業は農地集積の好機だ。秋田県由利本荘市平根地区は農地中間管理事業を利用し、地権者83人の農地を11人が運営する農事組合法人に集積して複合経営の基盤づくりを推進。地区担当の農業委員が集落営農代表などの経験を生かし、支援した。
 平根地区は霊峰鳥海山のふもとに広がる純農業地域だが、平均耕作面積は1ヘクタール未満。兼業農家が多く、高齢化による耕作放棄地の発生など将来への不安が募っていた。地区のほとんどを占める10アール前後の圃場を30アール〜1ヘクタール区画に整備する2年間の県営圃場整備事業の導入はそうした課題を克服する絶好の機会だった。同時に担い手法人を立ち上げて農地を集積。併せてリンドウ、アスパラガス、小菊を導入して経営を複合化し、雇用も含め農業で食べていける態勢を確立する構想だ。
 その中心が2014年7月設立の農事組合法人平根ファーム(佐藤晴廣代表理事)。83人いる農家個人が持つ農機はすべて処分。替わりに花・野菜の出荷調整施設と米乾燥調整施設の建設に加え、大型トラクター、8条植え田植機、60石乾燥機などの農機を装備した。
 農地集積で威力を発揮したのが農地中間管理事業。20%だった担い手への集積率が、80%に向上し、圃場も一団地にまとまった。効率化された稲作から生まれる余剰労働力を経営の複合化に活用。各戸で自給的で小規模だった野菜や花の栽培面積を計約10ヘクタールにまで増やして農業所得の増大を図り、そこから生まれる雇用にも期待をかける。
 だが、伝統的に農地を他人に預けることに抵抗があった地域で、農地を集めるのは苦労もあった。けん引役になる平根ファームの構成員は現在、11人中6人が会社勤めであるなど兼業農家の参加意識を高め、貸し手は農地集積協力金がもらえることなども活用して説得に当たった。
 地区担当の農業委員として集積を支援した佐藤邦幸さん(60)は米16ヘクタールとリンゴ園を経営し、集落営農組織の代表者でもある。「小規模な経営ではむつかしい時代になってきたことと、複合経営の強み、施設園芸を導入することで地域に雇用が生まれ、農業に永続力が生まれることを強調しました」と振り返る。

写真説明=集積された農地を示す平根ファームの佐藤晴廣代表(右)と佐藤勇希理事