農地の有効利用と担い手確保めざす 群馬・南牧村

 群馬県甘楽郡南牧村は、山村振興法、過疎法、特定農山村法の3法に指定されるなど、急な傾斜地が多く集団農地の確保が難しい土地柄。農業者の高齢化や荒廃農地の増大など課題を抱えるが、村中央部に位置する子母山地区は、「天空の花畑」と銘打ち、県が策定
した中山間元気創生基盤整備構想の実現に向け、農道、給水施設、獣害防止柵を整備し、農地の有効利用と担い手確保に乗り出した。

工事前(左)と工事完了後
フェンスと給水施設

 子母山地区は、中山間地域等直接支払制度を創設当初の2000年度から活用している村内唯一の地区。標高450~500メートルの南東に開け、現況勾配が25度前後ある急傾斜地で花卉と露地野菜が主に栽培されている。
 2016年度に県西部農業事務所農村整備課が中山間元気創生基盤整備構想を作らないかと村へ持ちかけた。座談会を開いて天空の花畑構想を説明し、2017年度には事業実施のめどがついた。地区の農地面積は3.18ヘクタールで、受益者は15人。2018年度から基盤整備が本格的に始まり2020年度に完了した。工事費は2億3420万円で、国が55%、県が25%、村が20%を負担した。
 軽トラックなどによる通作や農業機械の導入が可能となるよう、既存の農道や駐車場までの農作業道路を新たに整備して、作業の効率化を実現した。
 それまで農業用水は雨水や自宅からの運搬に頼ってきたが、同地区の湧水を集水して活用するための貯水槽や給水栓などの施設を整備。農業用水を安定的に活用できるようになった。また、約2メートルの防護柵で同地区の外周を囲み、ひどかった鹿による食害は激減した。

 同村では、本事業以前の2016~2017年度に補助事業を活用した獣害防護柵の設置を行っていた。その際、農業委員会が村に対し、「将来にわたって農地が維持されれば負担金は免除すること」を意見書として提出。同地区は受益者負担なしで補助事業を導入できていた。そのため、「天空の花畑」事業も受益者負担なしで実施することができた。

 同村は、標高差を利用した切り花などの生産が盛んだ。生産者は20~80代、女性4人を含む20人が南牧村花卉生産組合員として全国へ出荷。現在はアナベル、クジャクアスター、リシマキアなどをはじめ数十種類の花が生産されている。
 同地区では、3人の組合員が花卉を生産している。小金澤八郎さんは「2005年から花卉を始めたが、今はとても作業が軽減されてありがたい」と話す。また、小金澤浩さんは「花卉は軽量で作業がしやすい。若い組合員の考え方はとても新鮮でパワーをくれる。楽しく
仕事ができ感謝している」と笑顔を見せる。
 2020年度の農地中間管理事業による集積は1.13ヘクタールで、4経営体に集積された。同村では本事業を契機に農地集積、担い手の確保に本格的に乗り出しており、農業委員会の黒澤俊雄会長は、「継承できる農地は守って、意欲ある若者に使ってもらえるようにしたい」と意欲を語った。