遊休農地活用し小麦栽培 地元の蔵でしょうゆ生産へ 愛知 豊田市農業委員会

鳥獣害対策用の柵を設置した圃場。
(前列左2人目から)推進委員の加納さん、
農業委員の伊藤さん、横粂会長、
推進委員の渡邊秀己さん、
元推進委員の林久司さん、
(後列左2人目から)推進委員の宇井正法さん、
篠田譲さん、鈴木順三さん

 豊田市は愛知県のほぼ中央に位置し、面積は918.32平方キロメートルと県内1位の広大な面積を持つ。自動車産業をはじめとした工業化が進んでいる一方、中山間地では高齢化に伴って農地の遊休・荒廃化が進んでいる状況にある。

豊田市大多賀町で仕込まれたしろたまり

 中山間地に位置する足助地区の大多賀町には約11ヘクタールの農地があるが、高齢化の進展によって遊休農地が地域全体に広がってきた。一方、良質な水が豊富にあることに、しょうゆなどを製造する日東醸造(株)(碧南市)が着目。1999年から琥珀色が特徴の「しろたまり」の仕込み蔵として小学校の廃校を利用している。
 しろたまりの原料は小麦だ。そこで同市農業委員会(横粂鈞会長)では、小麦生産による遊休農地の解消に向けた栽培試験を行うこととした。
 標高が高く冬の寒さが厳しい場所なので、2019年には高冷地用品種の「シラネコムギ」、しょうゆの原料に適している「イワイノダイチ」、平たん部で通常栽培種の「ゆめあかり」の3種を栽培した。その結果、シラネコムギが栽培に適していることがわかり、2020年にはシラネコムギのみ面積を拡大して栽培試験を行った。

廃校を仕込み蔵として利用

 同委員会は今年6月、本格導入に向けて、地域の担い手、JAなどと栽培品種や生産にかかる交付金の活用、乾燥調整や販売方法について話し合った。
 その結果、県内で流通量が多く収量性が高い「きぬあかり」を生産し、JAを通じた共選により出荷することとした。試験を行った品種に比べ収益性が高く、継続的に営農することが可能になると判断したからだ。秋には同地区月原で生産が始まる予定だ。
 担い手を確保する観点から、担い手である農業委員の伊藤政和さんを中心に、JAなどの協力を得て、集落で法人の立ち上げも検討されている。
 この取り組みに中心的に携わってきた農地利用最適化推進委員の加納一範さんは、「生産した小麦は共選で出荷することにより愛知県産小麦として流通することになる。足助産に限定して日東醸造に納品されるわけではないが、将来は足助地区で生産された小麦を原料として醸造された『しろたまり』が全国に販売されるようになることが夢」と語った。