「レモン島構想」実現へ農地集積 広島・大崎上島町農業委員会

 瀬戸内海の真ん中に位置する芸予諸島の島、大崎上島町は「レモン島構想」を掲げ、優良農地の団地化を図り、認定農業者や新規就農者、参入企業などの担い手に農地を集積する取り組みを進めている。その取り組みの一翼を担う同町農業委員会は7月末に委員の任期満了を迎え、8月から新体制による一歩を踏み出した。

大串入相新開地区の集積状況を表した地図

 同町のレモン島構想は、町の第2次長期総合計画に基づき、島内の平たんな大串入相新開、中野新開、東原下など数地区に、計20ヘクタールの畑地を整備し、レモン栽培を振興する計画を柱に進められている。
 柑橘畑の多くは島の傾斜地に点在しており、また農業者の高齢化により管理が行き届かない場合もあり、担い手への集積は難しい。そこで、柑橘栽培には不向きだった水はけの悪い平たん地や水田に排水やパイプラインを施工。農道も整備した畑地を造成し、新たにレモンを栽培する計画が立案された。

 この計画に参加した大串入相新開地区はこれまで、水田・畑約17ヘクタール(所有者は19人)を作業共同組合である大串入相新開組合(組合員6人)などが管理してきた。人・農地プランの実質化に向けて、昨年3月に行った耕作者へのアンケート調査では、7割超が60歳以上の高齢者、約9割が後継者がいないと回答し、高齢化と後継者不足が見える化される結果となった。
 同地区での畑地造成後の農地利用について、地区住民を中心に、県、町、農業委員会、JAと話し合いを重ねた結果、昨年3月に約9ヘクタールの集積・集約を図る人・農地プランが作成された。中心経営体には、レモンは柑橘専業の法人(株)ルーチャード、水田は大串入相新開組合と地区の認定農業者が位置づけられた。
 現在までに、農地中間管理事業を活用して3.1ヘクタールの畑が同法人に集積され、レモンの定植が進められている。

 同町農業委員会は8月の改選で、農業委員7人、農地利用最適化推進委員12人、計19人の新体制となり、平均年齢は前回より2歳若返って55歳となった。
 町と連携して担い手の育成と守るべき農地の集積・集約化を進めている同委員会の西田秀夫会長は、「改選でバリバリ活躍している年代が増えた。若手委員の行動力とベテラン委員の経験を組み合わせ、これからの担い手が求める優良農地の確保とあっせんなどに取り組んでいきたい」と話す。
 また、同委員会事務局は今後、農業経営で忙しい委員の負担軽減のため、デジタル農地地図の活用や荒廃農地の非農地判断を進めるなど、業務の効率化を図っていく方針だ。