耕作条件改善し担い手に農地集積 長崎・諫早市農業委員会

地区内で進捗状況を協議

 諫早市は2005年に1市5町が合併して誕生した。農業は市の基幹産業。県最大の平野である諫早平野や諫早湾干拓地、中山間地など多様な地域で、露地・施設野菜、果樹、畜産、水稲、麦、大豆、花卉などを展開している。近年は農業従事者の高齢化や担い手不足という課題を抱えながらも、魅力ある農業の育成・振興が図られている。

山口委員(右)と陣野委員

 諫早市農業委員会(山開博俊会長)による昨年度の農地中間管理機構への貸し付け面積は162.2ヘクタールで、県全体の680.5ヘクタールの約4分の1を占めた。
 この中心となったのは、2018年度から市内7地区で着工した農地耕作条件改善事業だ。排水不良により有効活用が図られていない農地の条件改善を行うことで、担い手への農地集積や裏作導入などを実現してきた。
 農業委員の山口廣三さんは、事業実施主体の一つである「森山地域保全団体運営委員会」の委員や杉谷地区の自治会役員も務めており、推進した一人。「水田の多くは水はけが悪く、麦や大豆の栽培が困難だった。将来、借り手が見つからなくなったり、有効利用されなくなることを懸念した」と動機を話す。
 また、「地区内の地権者は約170戸。借り手には認定農業者もいればそうでない者も混在していた。分散錯圃状態の貸し借りを一度きちんとしておきたいとの考えもあったようだ」と一緒に推進した市農林水産部の担当者は話す。
 山口さんや市農林水産部、農地中間管理事業の担当者らは、地主と耕作者双方を対象とした説明会や戸別訪問を繰り返し、事業実施を呼びかけた。工事は自力施行で行うこととし、地元負担を無くすことで推進に弾みをつけた。そのかいあって100%の同意を得て、18年度から3年計画で工事が着工し、昨年度に完了した。山口さんも自ら測量などに携わった。

測量も自分たちで実施

 杉谷地区の施工面積は約53.5ヘクタール。山口さんら関係者の努力により、農地中間管理事業の活用面積は今年3月末で9ヘクタールまで進んだ。
 山口さんは、「排水対策により水田裏作など有効利用のめどもついてきた。農地中間管理機構を通じた貸借により、借り手も見つかりやすくなるし、担い手へ集約もしやすくなるだろう」と話す。
 5年前に基盤整備事業に携わったこともある農業委員の陣野昭則さんとともに、「今後は農家も少なくなる。今のうちに後を継ぐ担い手のために手を打っておくことが大事」と分析する。
 さらに山口さんは、「農地を利用しやすくなったと喜ぶ声も聞こえてくる。ただ、認定農業者になるべきなのに、なっていない担い手もいる。機構を通じた貸借をためらう人もいる。引き続き農地中間管理機構の活用を地道に説得していきたい」と農業委員としての今後の意気込みを語った。
 同委員会では関係機関と連携しながら、各地区の課題の整理や進捗状況の把握に努め、山口さんらの活動を横展開しながら「人・農地プランの実質化」と「農地利用の最適化」を進めていく考えだ。