遊休農地発生防止へ目に見える活動展開 岩手・洋野町農業委員会

 洋野町は岩手県の沿岸最北端に位置する中山間地域で、総面積の7割を山林が占める。1割程度を占める田畑では遊休農地の発生や担い手不足が課題となっている。そのような中、同町農業委員会では遊休農地の発生防止の啓発と食育活動に取り組んでいる。

遊休農地を委員らが再生している様子(19年度)
遊休農地発生防止を啓発する看板の前で
初めての収穫体験後の集合写真
(19年度)

 洋野町農業委員会(髙城健一会長、農業委員14人、農地利用最適化推進委員14人)では、2019年度から、遊休農地を解消して発生防止啓発の看板を設置するとともに、小学生などを対象とした収穫体験に取り組んでいる。
 同委員会は2019年度に大野地区の10アール、種市地区の12アールの遊休農地を委員らが自ら再生し、当該農地に遊休農地の発生防止を啓発する看板を設置した。
 同年の秋には、農業・農地の大切さを啓発するため、その再生農地で小学校・保育園などの子供を対象とした収穫体験を実施した。
 この取り組みは、委員からの「農地がきちんと再生しているかどうか、試験的にカボチャやサツマイモを植えてみたい」との声がきっかけだった。女性委員からの「看板が町民の目を引くよう、花を植えてみたい」との意見も取り入れた。
 種市地区担当の農業委員である馬場賢一さんは取り組み当初を振り返って、「この取り組みにより、総会で顔を合わせるだけではできない委員同士のコミュニケーションが図れた。コロナ禍ではあるが、畑の手入れをしながら話をすることもできる。今後も続けていきたい」と笑顔で語る。

 収穫体験はカボチャやサツマイモの収穫期を迎えた頃のアイデアだった。予想以上の出来で量があったことから、町内小学校や保育園などに声を掛けて実現した。昨年は新型コロナウイルスの感染対策を講じた上で、少人数での収穫を複数回に分けて実施した。
 小学校教職員からは、「昔は校内に収穫体験のための畑があったが、教職員の減少で管理が難しくなってなくなった。児童に良い経験をさせてもらえてありがたい」と感謝の声が上がっている。
 収穫体験をした児童が祖父母にサツマイモをプレゼントしたことから、喜んだ祖父母から農業委員会に感謝の手紙も寄せられた。
 この他、収穫したカボチャやサツマイモは、児童館、こども食堂、老人ホームにも配布され、食事やおやつに利用されている。
 髙城会長は、「農地を守ることの大切さを啓発するため、町民の目に見える農業委員会活動がしたかった。子供たちに農業や農地の大切さを教え続けていきたい」と熱く語った。
 今年の秋も万全の感染対策をした上での収穫体験を予定している。再生した2地区の農地では、遊休農地の所有者が保全管理を始めるなど、取り組みの効果が出始めている。