荒廃農地の解消へ小集団農地を集積 熊本・南小国町農業委員会

 担い手不足と高齢化を背景に、熊本県内の中山間地域では農地の利活用が大きな課題となっている。課題解決のひとつの取り組みとして、小集団農地の集積という手法で荒廃農地の解消に望みをかける南小国町農業委員会(河津篤会長)の活動を紹介する。

農業委員会をリードする河津会長(左)と穴井堅会長職務代理

 南小国町は阿蘇外輪山や九重連山の麓に位置する。黒川温泉郷など全国的に名の知れる温泉地があり、観光業と農林業が町の主産業だ。総面積約116平方キロのうち85%が森林や原野。農地の多くは筑後川など大小七つの川に沿って広がっている。
 農業では、豊富な水と山間部の冷涼な気候を生かした水稲や、キュウリなどの高冷地野菜、ホウレンソウや花卉など施設栽培、シイタケなどきのこ類の生産、熊本県のブランド牛「あか牛」などの畜産が盛んだ。
 同町には31地区42の集落があり、総農家数は429戸、うち91戸が専業農家で、認定農業者は4法人を含めた63経営体となっている。農業者の平均年齢は71歳で、高齢化と後継者不足に伴い、遊休農地の発生が懸念されている状況だ。
 同町農業委員会では、町内の農家に対し、各種補助事業の希望などの聞き取りとあわせ、「所有農地の 貸付・売却 希望申出書」を独自に作成して意向把握を進めている。 貸し付け・売却の申し出は今年8月までに8人から34筆、約2.7ヘクタールあった。収集した情報は広報誌やケーブルテレビで定期的に公開している。
 活動の中で遊休農地が増えている地区が見えてきた。そこで本年度、湯田・馬場・志津の3地区を農地集積のモデル地区に設定。利用意向の深掘りを行い、売買や貸借、基盤整備を進めるなど、遊休農地の解消に力を入れている。

中原地区の農地パトロールのオリエンテーション(8月23日)
中原地区の農地集積関係の打ち合わせ会議(9月13日)。
住民や法人などが参加。右奥が河津会長

 同町では新規就農者の支援にも力を入れている。広大な採草放牧地がある一方、耕作農地は不整形で小面積が多い。水利権や集落の維持管理の作業内容やその回数など、農業に関する地域の取り決めもさまざま。営農や利用状況も多様で、それぞれの地域の実態に沿った「農地利用の最適化」が必要な状況だ。そのため、新規就農希望者には情報を細かく理解したうえでの就農を勧めている。
 マッチングに際しては、農地を紹介して単に契約を結ぶだけではなく、さまざまな集落活動を事前に伝えるようにしている。各委員が受け持つ地域の細やかな情報やそれぞれの人脈から得られる情報、農林課など行政が把握する情報などをまとめて伝えてマッチングを行い、合意形成に導くようにしている。
 河津会長は、「合意形成が取りやすい5ヘクタール程度の小集団を一つのエリアとし、基盤整備や農地の賃借料に対する新たな優遇措置を検討するなどしながら、行政とともに農地の集約化を促していきたい」と今後の抱負を語った。